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あの兵士だけ強過ぎません!?
ノアの部屋を出ると、イーサンが声をかけてくれた。
「レティシア様、少し時間がありますよね。良ければ兵士達の訓練を見学しませんか?」
さっきの屈強な兵士さん達の?
確かにどんな訓練してるんだろう。ちょっと気になる。
ネイサン国を散策しようと思ったけど、それはいつでもできるよね。今は兵士さん達に興味あるかも。
「そうしようかな」
「はい。でもレティシア様だけでは不安ですね……。あの方も呼びますか」
「あの方……?」
あの方って誰だろう。
それに、私だけってどういう意味?
「イーサンは見学しないの?」
「はい。俺は訓練所にはいますが、見学はできません。だから誰かレティシア様の相手をしてくれる方を呼びます」
「そう、なんだ?」
そういえばノアが、兵士が強いのはイーサンのおかげって言ってたけど、関係あるのかな?
「レティシア様、こちらです」
「うん」
着いたのは城の庭近くにある広々とした訓練所。
武器やトレーニング器具のようなものがたくさん並んでる。
そして数百人の兵士の数に圧倒された。
エディタ国なんて比にならないほどの、兵士と訓練所の充実度。
ネイサン国って、すごい。
端にあるベンチに座っていると、
「あの〜」
横から女の子の声が聞こえた。
「は、はい」
「レティシアだよね?」
「え?そうですけど……」
私とあまり変わらない年齢の女の子だった。ふんわりワンピースを着ていて、緩く巻いて結んだ髪は肩の近くで揺れている。童顔なのに大人っぽい雰囲気の、不思議な女の子だ。
「私、モニカ・スミス。モニカって呼んでね。あ、敬語もいらないからね。ネイサン国で薬屋をしてる、ノアの幼馴染だよっ」
モニカは太陽みたいな笑顔で自己紹介した。すごく明るいし、優しそう。しかもノアの幼馴染?
すぐに好感を持ち、私も自己紹介した。
「はじめまして。エディタ国から来た、聖女のレティシア・サンチェスです」
「よろしくね〜。イーサンに呼ばれて、レティシアの相手をしてほしいって頼まれたんだ。エディタ国の聖女っていうから、どんな人かな〜って思ってたんだけど、こんなに可愛い人だったなんて」
ストレートな褒め言葉に、思わず照れる。だって褒められたのなんて、ほとんどなかったから。しかも外見を褒めてくれる人はいなかった。昔から、私は聖女としての価値しか与えられなかったのに。
「可愛いなんて、そんな……。でもありがとう」
「エディタ国にはもう一人聖女がいたよね?レティシアのお姉ちゃんだっけ?」
「うん。アリスっていうの。でも私は、もう姉とは思わない」
「え?どういうこと?……って、聞いてもいいのかな?」
「もちろん」
私は、あの夜イーサンにした話と同じことをモニカに話した。
モニカは相槌を打ってくれたり、アリスや両親に怒ったような態度を見せたりしてくれた。
「そんなことがあったんだ。でも今日はレティシアの方が優れてるって証明したんだよ。ちょっとスッキリした」
「イーサンから全部聞いたの?」
「うん。ノアと長い付き合いってことは、イーサンとも長い付き合いってことだからね。ちょっと押したら、結構すぐ話してくれるんだよね〜」
モニカは小悪魔のような顔で笑うと、訓練を始める兵士達を眺めた。
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