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「ベラ……お前はアリスの味方をしていたのだろう?」
「はいっ。アリスと一緒に、レティシアを懲らしめようって話だったんですけどぉ……」
ベラはくすりと笑って、俺の前に歩いてきた。
「アリスって本当に自分勝手でぇ。正直言って、合わない人種だったみたいです」
「…………」
アリスがいなくなったことをいいことに、ベラの悪口が爆発した。
こいつは人のことをなんとも思っていない。
「あれっ、ノア様?」
「……何が目的だ」
「もう〜、まだ伝わってなかったんですか?私はただ、ノア様を私のものにしたいだけですよ?何度も言ってきたじゃないですかぁ」
ベラは俺をうっとりとした顔で見つめたあと、俺の腕の中にいるレティシアに目を向けた。
「レティシアは聖女のチカラを使い果たしたんでしょ?いつ目覚めるかわからないんでしょ?そんな人と一緒にいて楽しいんですか?」
ベラがレティシアに触れようとした。
焦ってレティシアを強く抱きしめる。誰にも傷つけられないように。
「ノア様〜。そんな抜け殻、大切にしなくてもいいですよぉ!」
その言葉に、ずっと我慢していたものが壊れた気がした。
「……だ」
「え……?」
「お前らのせいだろっ!!」
ベラが息を呑む。
俺はゆっくりと立ち上がった。
レティシアはしっかりお姫様抱っこして。相変わらず穏やかな寝息を守りたかった。
「お前とアリスのせいで、レティシアはこんなに傷ついた……」
滅多に泣かない俺だが、このときだけはうっすらと涙が滲んだ。
俺を自分のものにしたいとかいう、自分勝手な欲望のためにレティシア達を巻き込んで……。
俺にはレティシアがいる。それは今まで何度も言ったし、レティシアと出会う前だってずっと断ってきた。
それなのに。
なんでここまで俺に執着する?
そういうところ、アリスと似てる。
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