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「どうしたの?」
「レティシア、大丈夫?ジルに何もされてない?」
モニカが焦ったように聞いてきて、私は首を傾げた。
「別に何もされてないよ?」
「ほんと?」
「うん」
「自分がどこから来たかって言った?」
「言ったけど」
「えっ!?ほんとに大丈夫?」
「大丈夫だよ」
モニカってば、どうしちゃったの?
「良かった〜。レティシアがエディタ国出身ってバレるとジルが暴れると思って」
ああ、なるほどね。
確かにジルはエディタ国を相当恨んでるみたいだよね。まあ剣は突きつけられたけど特に怪我はないし。
「……いや」
ジルが小さく呟いた。
「僕は彼女に、剣を突きつけた」
それ言わなくてもいいのに!
怪我してないし、ジルに対して怯えてもないし!
そんなこと言ったら……。
「ええっ!?レティシアっ、怪我してない?」
こうなるよね。
モニカが私をとことん心配するのは、なんとなく予想できた。
それにしても、モニカって結構心配性なんだね。もっと軽く流してくれると思ってたけど。
「ジル。気持ちはわかりますが、レティシア様はノア様を救った恩人なんですよ?」
「……はい」
「レティシア様に何かあったら、ジルの責任になった可能性もあります。今後このような行動は慎むように」
「……了解しました」
「なんでジルってそうなの?なんで他の人のこと考えてくれないの?」
俯くジルの顔色が悪い気がして、言う必要ないのに思わず口から言葉が出た。
「言いすぎだよっ!!」
「!」
「レティシア?」
「レティシア様?」
「私はジルの事情を知らないから、余計なことは言えない立場だってわかってる。でもジルは努力家で、実力も確かなんでしょ?それなのに、なんで……皆それ以外のジルを見ようとしないの?少なくとも私は……ジルの中身が知りたい」
言い終わってから、私はバカだと思った。
イーサンもモニカも、ジルを傷つけるつもりなんてない。わかってる。他国から来た私が首を突っ込んでいい話じゃない。
ジルと少し関わっただけで知ってる気になるなって思われても仕方ない。
私は誰にも見せないジルの心の内を知りたい。ただ、ジルの理解者になりたい。
どうしてそこまでって思った。ようやく気づいた。ジルと私は似てるんだ。
ジルと今までの私が――重なって見えたんだ。
ジルは努力してるのに、誰もそれを見ようとしてない。私もいろいろな努力をしたつもりだったのに、誰からも見てもらえなかった。
一人でいる選択をしてるけど、本当は誰かと一緒にいたいと思ってることだって。
ずっとずっと、隠してただけなんだ。
ジルの気持ちを完全に理解してるわけじゃないけど、なんとなく似てるって直感した。
私がジルを見てたのは、一人で一心不乱に剣を振り続けるのが気になっただけじゃなくて、私の聖女のチカラが少し働いてたからだ。私が「誰かの傷ついた心を癒したい」って無意識に願ってたんだ。
今更気づくなんて、私はとことんバカだ。
私は踵を返して、城の中に戻った。
使っていいと言われた部屋に入り、ベッドにダイブした。
「私は……もう誰にもあんな思いしてほしくないだけなのにな」
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