運命を変える出会い

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翌朝、私が身支度を整えているときだった。 勢いよく自室のドアが開け放たれ、アリスがずかずかと入ってきた。 「勝手に入ってこないでくれる?」 冷たく睨むと、アリスは目を三角にして叫ぶように言った。 「さっきネイサン国からレティシア宛てに手紙が届いたの!ネイサン国に行ったことないくせに、なんで手紙が届くのよ!とにかく早く会議室に来て!」 私は微笑を浮かべて、落ち着いた声で答えた。 「手紙の理由にアリスは関係ないわ。それに、ネイサン国に行った経験なんてあってもなくても変わらないの」 「何言ってんの……?っていうか、なんで私のこと呼び捨てにしてるの!?私は姉なのよ?」 今までなら何も反論せずに従っていただろう。そもそも姉を呼び捨てにしようとも考えなかったはずだ。 でも私は少しでも現状を変えたい。だから、次に何か言われたら、少しでも反論することに決めていたのだ。 「それが何?姉を呼び捨てにしてはいけないなんて法律、エディタ国にはないよ?」 「そういう問題じゃないわよ!姉に敬意くらい払えって言ってんの!」 「婚約者を奪った姉のどこに敬意を払うの?」 「……っ。私はレティシアより優れた聖女なの!そこに敬意を払いなさいよ!」 「私、今日家を出てネイサン国に行くの。だからもう関係ないよ。そもそも、私がアリスに敬意を払ったことなんてないから」 「生意気なことばっかり言うな!」 アリスが私に向かって拳を振り上げる。 私は無表情でアリスの拳をよけた。 「ここでアリスと喧嘩する気はない。さっさと会議室に行きましょう」 私は会議室に向かった。 アリスはそこに立ったまま。 「……レティシア、生意気なことばっかり言いやがって。……あ、これって……」 「レティシア、ネイサン国から手紙が届いたわ。これはどういうこと?」 会議室に入ると、開口一番にお母様が問い詰めてきた。 側のテーブルには「レティシア・サンチェス様」と書かれた手紙が置いてある。 「言う必要はないわ。私はネイサン国に行く。ただそれだけを伝えにきたの」 「何言ってるの……?」 「レティシア。なぜネイサン国から手紙が届くんだ。お前はネイサン国に行ったことがないだろう」 「同じことばっかり聞かないで。言う必要がないから言わない」 そこにアリスが会議室へ入ってきた。 「お母様、お父様。レティシアってばおかしいわ!ネイサン国に行くって言うし、私のこと呼び捨てにするし、生意気なことばっかり言うし」 アリスの目には、薄らと涙が浮かんでいる。きっと今まで言いなりだった私が反論したから悔しいんだ。 「レティシア、アリスの言うことは本当なの?」 「ええ。私はもうお姉様なんて呼ばない。アリスはもう他人として扱うから」 「いい加減にしなさい!早くネイサン国に行く理由を話しなさい!」 父親のヒステリックな声とは真逆の、落ち着いた声で言い返す。 「いい加減にするのはそっちじゃないの?」 「お父様!こうなったら、手紙を読んでやりましょうよ!」 アリスが手紙を掴んで父親へ提案する。 父親が頷く。 アリスは手紙を乱暴に開け、乱暴に便箋を取り出した。 アリスが手紙を読み上げる。 レティシア・サンチェス様 レティシア様の家族が読んでいることを考慮して、簡潔にまとめます。 なるべく急いでネイサン国へいらしてください。 かなり弱ってしまい、命が危ういとのことです。 一刻を争うといっても過言ではないでしょう。 俺はレティシア様の聖女のチカラが、きっと救ってくださることを信じています。 レティシア様の到着をお待ちしております。 イーサン・スチュワート ノアの命が危ない!? 早くネイサン国に向かわなくちゃ……。 でもこの家族はどうしよう? 「レティシア、早く事情を説明しなさい!」 「イーサンはネイサン国の執事だろう。なぜレティシアのことを知っている?」 「一刻を争うってどういうこと!?」 ああもう、うるさい!! あんた達に構ってる時間なんてないのに! 早くノアを助けに行かなくちゃ。 私はアリスから手紙を奪い、自室に戻る。 私はここを出て、ノアを助けて、ネイサン国で暮らすの! 誰にも邪魔させないんだから! 私は急いで必要な荷物をバッグに詰める。 「あれ……?ペンダントがない!」 昔から大切にしていたペンダントがなくなっていた。 朝はこの引き出しに入っていたのに……。 「あれ〜?レティシア、どうしたの〜?」 アリスが部屋の入り口に立っていた。 「アリス……!」 「もしかして、探してるのってこれ?」 そう言って見せたアリスの手には、私のペンダントが握られていた。
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