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「なんでアリスが持ってるの?返して!」
「嫌よ。私をバカにしたら、こういう目に遭うの。ちゃんと覚えてた方がいいわよ?」
「…………」
「確かこのペンダントって、お祖母様の形見よね。これ壊したらどうなるかな〜?」
「ふざけんな。そのペンダントに何かあったら許さないから」
十年前に亡くなった祖母の形見。祖父は私やアリスが生まれる前に亡くなっていた。祖母は私とアリスが不平等であることをいつも怒ってくれていた。祖母との思い出だってたくさんある。大切な人の形見だから。絶対アリスなんかにあげない。
「きゃ〜、怖〜い。まあいいわ。私は別にこれが欲しいんじゃないの。返してほしいなら条件があるわ」
「条件?」
「ええ。私達もネイサン国に連れてってよ」
「は?」
一瞬、何を言っているのかわからなかった。
アリス達もネイサン国に?
せっかく一人で過ごせるかと思ったのに……。
「『は?』じゃないわよ。レティシアってば飲み込み悪くなーい?」
「なんでそんなことしなくちゃいけないの?」
「そんなの決まってるでしょ。ネイサン国に貸しを作るためよ」
「貸し?」
「レティシアが呼び出されたってことは、聖女関係に決まってる。でもレティシアより美しくて優れた聖女の私が行った方が問題も早く片付くでしょ。そしたらネイサン国に貸しができて、エディタ国がちょっと有利になる。レティシアもネイサン国で過ごすっていうバカみたいな話もなくなる。これで全て解決よ」
自分勝手過ぎる!
私はこんな家捨ててネイサン国で暮らしたいのに、それを阻止するなんて!
全て解決って言ってるけど、要するにアリスが優位に立ちたいだけじゃん。それは解決って言わないのよ!
私はアリスを正面から睨んだ。
「アリスは……自分勝手過ぎる。全部解決なんて、自分が優位に立ちたいだけでしょ。そんなの解決じゃないから」
「生意気なこと言わないでくれる?このペンダント、壊してもいいのよ?」
「……っ」
ペンダントのことを言われたら、私は何も返せない。
こうなったら作戦変更よ。ネイサン国のどこかで逃げよう。イーサンなら手助けしてくれるはず。
「……わかった。アリス達も一緒にネイサン国に行きましょう」
「そう、それでいいの。最初からさっさと了承してよね」
……なんでアリスってこんなに上から目線なの?聖女のチカラが私より上っていうけど、絶対に私の方が上だと思う。
呪いで苦しんでるノアに、こんな人会わせなくないなぁ……。
その後、アリスと私は会議室に戻ってきた。
「お母様、お父様。レティシアが一緒にネイサン国に行くことを了承したわ。これでネイサン国に貸しを作れるね!さすが私。レティシアが大事にしてるペンダントと引き換えにすれば楽勝よね〜」
アリスが鼻を高くして言う隣で、両親もアリスを褒めていた。
「さすがアリスね!本当に頭の良い子だこと」
「自慢の娘だ。もっと誇ってもいいくらいだ」
何言ってるんだろう、この人達。
世界一どうでもいいから、さっさと行きたいんだけど。
アリスって顔は良いけど、性格はゴミみたいに悪いし、すぐ自慢するし、自惚れもいい加減にしてほしいわ。謙遜なんて一回もしたことなさそう。
「さて、そろそろ出発しましょう」
それから一時間ほどかかって、ようやくネイサン国へ向かうことになった。やれやれ。
「私とレティシアが隣なんてありえなーい」
馬車の中でもアリスは我儘放題。
都合上、私とアリスは隣に座っていた。
私だってアリスの隣が一番嫌よ。
なんでこんなに我儘なんだろう。両親が甘やかし過ぎたんだよね。
私は両親にほとんど褒められたことないし、そもそも興味を持たれたことすらない。私を見るときは叱るときか雑用を押し付けてくるときだけ。つまり、何もしなければ空気のように扱われる人生だった。
ようやくこんなクズ家族と離れられると思ったのに。
でもまだ諦めてないから。
私は自由になって、自然豊かなネイサン国で暮らすんだから!
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