運命を変える出会い

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ネイサン国に着き、私達は城の前までやってきた。 入ろうとすると、門の前に立っていた二人の兵士に止められた。 「おい止まれ。見たところ貴族のようだが……城に入る許可証はないのか?」 許可証……? 私は手に持っていた私宛ての手紙を渡した。 「これは……『レティシア・サンチェス様』?サンチェスってエディタ国を治める苗字だよな?」 「ああ。前にも来たよな。でも彼女は見たことがない」 「俺もだ。彼女も美しいが、確かものすごく可愛い美少女がいたはずだ」 それってもしかして……。 「こんにちはっ。お久しぶりでーすっ」 やっぱりアリスのことか。 私がアリスを嫌いな理由はもう一つある。 それは、他の場所では猫を被るところだ。 いつもは高圧的で上から目線な発言をしているけど、遠征とかで違う場所にやってきたときは、いつもより声を高くしたりお淑やかになったりする。 そんな裏表の激しいアリスが嫌いだ。 「前にも来てくれた聖女様ですよね!」 「アリス様……でしたっけ?」 「はい!アリスでーす。覚えててくれて嬉しいなぁ〜」 アリスの本性を見抜けない人達は、 「ふふふ……」 「可愛い……」 こういう反応になる。 アリスの裏表も嫌いだけど、こういう反応する人達も嫌いだ。 そのとき、誰かが足早にやってきた。 「何を騒いでいるんですか?」 「あっ、イーサン!」 完璧な身だしなみの彼は、あの日出会った執事のイーサンだった。 「レティシア様?ようこそネイサン国へ。おや、後ろの方々は……」 「ごめんイーサン……。ちょっと事情があって」 「……わかってます。レティシア様、早速こちらへ。一刻を争う事態です」 「そうよね。早く行かないと」 私とイーサンが城の中へ足を進めると、突然私の腕が掴まれた。 「きゃっ!?」 「私も行くに決まってるでしょ」 アリスが私の腕を掴んでいた。 「アリス……!お願い、離して!時間がないの!」 「だから、レティシアにできて私にできないことはないの。私が解決してあげる。感謝してよ」 「イーサンっ!」 助けを求めるようにイーサンの名前を呼ぶ。 イーサンはアリスをチラ見して、 「アリスもこちらへ。ただし、邪魔は許しません」 と早口で伝えた。 「なんで私は呼び捨てなのよ!それに、邪魔なのはレティシアでしょ!?」 「うるさい、黙れ。俺は元々レティシア様に頼んだんだ。俺の邪魔をするなら帰れ」 「イーサン……?」 今まで見たどのイーサンよりも、冷徹で厳しく、それでいて必死な声だった。 ノアのことを心から大切に思っているから……。 私はアリスの腕を引っ張り、城の中へ連れ込んだ。当然のように両親も後に続く。邪魔だっつーの! やがて着いたのは、一際大きな個室だった。 「ノア様、失礼します」 「……イーサン……?」 掠れた声でイーサンを呼ぶ、ノアらしき美しい男性。 私はノアに思わず見とれてしまった。だって今まで見たどの男性よりも綺麗だから。 ノアはベッドに横たわり、苦しげな声を漏らしている。 彼の左半身は、「呪」という黒い文字で埋め尽くされていた。 「なに、これ……」 アリスが引きつった声を出す。 私はノアに目を向けたまま説明した。 「私が依頼されたのは、このノアの呪いを解くこと。イーサンはノアのことをずっと心配してたの」 「は……?なんで、あんたは……」 「え?」 「気持ち悪いっ!!何なのこれ!ノアはもっと綺麗だったはずでしょ?こんな醜い姿なんて信じられない!」 アリスの悲鳴のような声が部屋に響いた。 「うっ……!」 呻き声と共に、黒い文字がノアの身体を侵食した。 「ノア様!」 「私に……私にできないことなんてないんだから!」 アリスはそう叫び、ノアに手をかざした。
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