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優劣しか見てないの?
「……彼の呪いを解いて……」
アリスが囁くように唱えると、アリスの手から光が現れ、ノアを包み込んだ。そよ風が吹き、光が消えれば、呪いを解けたことになる。はずだった。
「……えっ?」
光が消えてもノアの左半身は黒い文字に侵されたままだった。
「な、なんで……?」
アリスの震える声が、部屋の中で消える。
「アリス、どうしたの?どうして呪いが解けていないの?」
「アリスなら解けるはずだろう?」
両親が焦った声で問いただす。
アリスは固まったまま、小さく声を漏らしていた。
「なんで……?私は聖女なのよ?私が一番なのに……」
「アリス、邪魔はするなと言ったはずです。絶望したいのなら外でどうぞ。俺はレティシア様の聖女のチカラが見たいのです」
イーサンの冷たい声に、アリスは弾かれたように言い返した。
「さっきからなんなの?レティシアレティシアって。私ができないんだからレティシアみたいなダメ聖女ができるわけないじゃない!」
「そんなことは聞いていません。邪魔だと言っているんです。レティシア様、こちらへ」
「うん」
「きゃっ!」
イーサンがアリスを突き飛ばし、私をノアの横に立たせた。
「ちょっと、何するの?」
「こっちのセリフです。自信満々にしゃしゃり出てきたくせに助けられてないじゃないですか」
「それはっ……!」
アリスが言葉に詰まる。
「さあレティシア様。聖女のチカラ、見せてください」
イーサンが微笑みを浮かべる。
前から思ってたけど、イーサンも裏表が激しいのかも。ちょっと口は悪いけど正義感が強いからいっか。
そっと目を閉じ、精神を集中させた。
私が失敗するわけにはいかない。
イーサンの期待を裏切らないためにも、ノアの苦しみを解放するためにも。
私は目を開き、ノアに手をかざした。
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