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母はすぐに私を追いかけて、まだ小さかった私の肩を掴む。あんな苦い薬を飲ませようとする母が、あの頃の私には当時好きだったアニメに登場する敵役のように見えた。
「嫌!!お薬苦いもん!!嫌い!!」
「飲まないとお友達に会えないんだよ?ずっと香織はしんどいままだよ?そうだ!ジュースと一緒に飲もうか。そしたら甘いはずだよ」
母は私を説得するものの、私は「嫌だ嫌だ」と首を横に振る。
薬には苦味を抑えるために甘いコーティングが施されている。でも、敏感な舌を持った子どもにそのコーティングは無意味だ。
さらに、そのコーティングはジュースに溶かすと溶けてさらに苦くなってしまう。そのことを大人になり、この職に就いてから初めて知った。
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