魔法のアイスクリーム

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布団の中に潜り込んでいたから、その時部屋に入ってきた母がどんな顔をしていたのかはわからない。私は言ってしまった後、ハッとして謝ろうとした。でもーーー。 子ども部屋のドアが静かに閉められた。母は何も言わずに部屋を出て行き、家を出て行った。 雨音が外から聞こえた。私は、母を追いかけるべきだったのかもしれない。でも私は布団に潜り込んだまま、雨音を聞きながらいつの間にか眠ってしまった。 そして、母は事故に遭ってそのまま帰らぬ人となった。自転車に乗ってスーパーへ行った帰り道、居眠り運転をしていた車に撥ねられ、亡くなった。母がスーパーで買ったのは、明日のご飯の材料なんかじゃなくて、カップに入ったチョコレートアイス一つだけだった。
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