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「メェメェ、起きて欲しいメェ~!」
「なに……?」
顔に触れてるモコモコのものが動く感触に眠りへ向かった意識が呼び起こされ、貼り付くそれを両手で鷲掴み剥がせば、バスケットボール大くらいの白い毛玉、ウール100%って感じのモフモフを抱き抱え「ふわぁ」とあくびをしながら上体を起こす。
そして膝の上にモコモコを乗せれば。
「起きてくれたメェ~、ありがとメェ!」
「……………………」
ピョンと膝の上で跳ね、くるりと回る毛玉の反対側には羊? のような顔がついてて、そして高めの声で人語を喋り出すので頭をかいて首を傾げ、頷いた。
「夢か」
羊にしては簡略化された見た目のそれが喋るなんて奇怪なこと現実に怒るはずがない、そう決め付けて起こした上体を背中からパタリと横に戻して目を瞑る。
夢でも寝られるなんてラッキーだ。
「夢じゃないメェ、起きて欲しいメェ!」
膝から転がって顔の前にやってきた羊もどきが喋りながら目の前でピョンピョン跳ね眠りを妨げられたので仕方なく目を開ければ、その適当な顔とバチリと目が合った、感覚。
「夢じゃない……?」
「そうだメェ、ボクを触ってみるメェ」
「ん~……モフモフで気持ちいい」
「エヘヘ」
何故か嬉しげな声を上げる羊もどきを存分に撫で回して「じゃ」とポンポンと撫でて目を閉じれば「起きてメェ!」とピョンピョン跳ねた。
「……何。初対面ですよね?」
「アッ、壁ってヤツだメェ……そうだけどそうだけど、ボクの声が聞けるなんて人なんて主人公以外に居るなんて思わなかったからお話して欲しいメェ」
「シュジンコー? よくわかんない、夢なら何でもアリか」
「夢じゃないメェ、現実なんだメェ」
語尾がメェメェする羊もどきにやれやれ、と思いながら再度上体を起こして「話って?」と指で毛を撫でる。
すごいモフモフ、気持ちいい。
「ボク、実はこのゲームのお助けキャラなんだメェ……で、主人公に話し掛けたら『喋る羊キモ』って言われて窓から投げ捨てられて、キミのとこまで転がって来たんだメェ~!」
「はあ、そうですか。大変ですね」
「全然信じてないメェ!」
「いや、ゲームとか。現実なのに喋るしモコモコしてるし、酷い人間に捨てられて可哀想だな、よしよし。はい、おやすみ」
「エヘヘ……って、だから夢じゃないメェ、わかったメェ、これを見るメェ!」
左右にモコモコ揺れる羊もどきが「パンパカパーンメェ!」と言うと急に目の前にフォンッとウインドウと言えば良いのかが浮き現れ、「何これ」と触れればツルリとした感触が。
『好感度一覧』と派手なフォントが一番上にデカデカと書かれ、その下に写真の横にハートが並んでて。
「2年春崎涼真……3年千堂流夏……1年秋田鳴路……3年坂上冬美? 全員うちの生徒?」
「そうだメェ! その4人がメイン攻略キャラだメェ~!」
「攻略キャラ」
全員男ですけど、と思いつつ、攻略キャラって言うんだし、この写真の隣のハートアイコンを見るに恋愛ゲーム的なやつなのか。
ギャルゲーならホピタンがやってるの見たことあるけど、と思う俺へ羊もどきがピョンピョン跳ねながら「信じてくれたメェ?」と聞いてきた。
何を信じたなのかわかんないけど。
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