夢の中の貴方は。

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ずっと気になっていることがある。 見ず知らずの場所で、見ず知らずの男性が私に向かって微笑んでくる夢をよく見ることだ。 ただ夢というには、鮮明すぎる気もするけど、実際に行ったこともなければ、見たこともない、会ったこともない場所や人なので、夢ということにしている。 私はなぜかこの夢をとても懐かしく感じる。 そして胸が苦しくなるほどに切なくなるのだ。 その日、また私は例の夢を見た。だけど、いつもと違ったのは、いつもなら会話もなく終わるはずの夢なのに、今回は男性が話しかけて来たのだ。 「もう少しで会えるね。」 「え?」 私は意味が分からず、聞き返した。 「迎えに行くから待っててね。」 そういうと彼は消えていった。 あの言葉が気になりながらも、何もない数日が過ぎたある日。 私は町を歩いていると、 『やっと……見つけた』 「え?」 それはまるで待ちわびた恋人との再会のような言葉だった。そんなこと言われても、こちらとしては初対面だと言うしかないのだが。 「あの……どこかでお会いしましたか?」 恐る恐る尋ねると彼は嬉しそうに笑うと、「あぁ、この姿じゃ分からないか。夢の中で迎えに行くと言ったじゃないか」と言った。 「あ」 その言葉で、目の前の男性が夢の中の人だと分かった。 そして、私の頭の中に、知らない映像が流れた。 「っ、貴方は……」 「そうだよ。思い出した?」 私の頭に流れた映像は前世の記憶だった。そして今まで見ていた夢も前世での記憶らしい。 彼はずっと探してくれていたのに、 「どうして忘れていたんだろう……。ごめんなさい……待たせてしまって。」 私は泣きながら彼に抱きついた。 すると彼は優しく抱きしめ、 「いいんだよ。また会うことができたんだから」と微笑むと、照れ臭そうに 「もう離さない、今度こそ幸せにするから、結婚を前提に付き合って欲しい」と私に言った。 私はそれにまた涙を流し、「はい!」と答えた。 私と貴方は運命のふたり。
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