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プロローグ
私は女。うん。それは間違いない。
しかし、私は女ではないと思ってしまう点が一つある。
この世界では男は鍵を、女は南京錠を神様から授かる。
男と女の鍵と南京錠が一致した時、それは運命の相手と言って神の祝福がもらえるらしい。
神の祝福は人によって違うようだが、みんな生活に困ったことはなく、一生幸せに暮らせるだとかなんとか。
だから、貴族や王族の鍵や南京錠の相手が下民や平民だったら、それはとても困ることだ。
身分が上で爵位を賜った貴族。プライドが高く、社交界=戦場であり、情報や噂は命と言っても過言ではない。
もちろん、はしたない行動をすれば逃げる場所もなく火炙り地獄と化す。
さて、説明はここまでにして私が神から授けられたのは錆びた鍵である。
えっ?と思うかもしれないが、これが現状。
私は六歳の頃行われるその儀式の時、驚いた。
女は南京錠がもらえるのが当たり前。その上でどんな形なのか。
そう思っていたのに。
鍵?
しかも錆びているという災いの予兆。
家族は私に罵声を浴びせたが、姉様が説き伏せた。
「この子への神託はこの子を何よりも大切にすることです。ここで捨ててしまったら我が公爵家がどうなるものか…。」
姉様の秘技、俯きがちの涙目により両親は私を家に置いてくれている。
姉様に感謝の言葉を言うと、「妹を守ることは姉の役目ですわ」と上品に言った。
いい姉を持った私は自分が与えられたのが鍵だと言うことを隠しつつ、十歳の社交界デビューも果たし、十二歳で王立学園に入る。
そして、二年生となり、淑女科でのお淑やかな生活を毎日送っていた。
そんな私の運命の相手騒動はのどかな日々のほつれから始まるのである。
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