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灯りのない茅屋の室内は、宵闇に包まれていた。
その光景は、盗猫民であるダスティンと、その娘リリーの視界には灰白色に包まれた空間のように感じられた。
盗猫民は、山奥にすむ少数民族で、猫のような暗視能力を持ち、額に引っかき傷のような三本線の模様を持つ。猫群という小さなグループを形成し、猫群同士での勢力争いを絶えず繰り返している。
2人は胡坐をかいて向かい合い、会話を交わしていた。
横には、ダスティンの妻であるローレンが床に伏していた。
「あと1つ……。活力薬を作るために、ウェーツの種がいる」
「わかっています。父様」
「売買の街・ファスピンのエヴァンズという商人の店で、ウェーツの種が出品される。それを盗んで来い」
「はい。母様のために、絶対にウェーツを手に入れます」
「活力薬があれば、母さんは確実に元気になる」
言下、ダスティンはゆっくりと立ちあがり、戸口のほうへ歩いて行った。
「今日はもう遅い。早く寝ろ」
ダスティンはそう言って、戸を開き、外へと出て言った。
戸口に背を向けて立ちどまると、身に着けていた腰袋から、イテブルの葉の葉巻を1本引き抜き、咥えた。
そしてマッチを取り出して火をつけ、葉巻を吸った。
棚引く煙が、星空に吸い込まれるように昇っていった。
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