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 いつでも気負わず自然体で、余裕があるように見えるのは、アメリカ人だからなのか? それともマナブだからなのだろうか? 弘樹と同じアニメオタクのはずなのにほの暗い後ろめたさなんてみじんも感じない。自分が思うがまま人生を楽しんでいる、マナブからはそんなポジティブな精神が伝わってくる。  当然モテるんだろうな、と思う。女の子だけじゃなく会社の上司とか同僚とか、周囲の人間みんなにモテるやつだ。これまでもたいしたコンプレックスも抱かずイージーモードの人生だったんだろうなと、弘樹の中の卑屈な心が口をとがらせる。 「ここ座りましょう」  そう言って四人掛けの油じみたテーブルにつくときも、さりげなく椅子を引いてくれた彼を見ながら思う。  だから人にも優しくできるし、優しくされる。  最初から与えられたものが違う。出発点から違うんだ。だったら、商業でもない漫画をひとつ好きな作家に譲って口をつぐむことくらい、なんてことないじゃないか。 「何食べます? おすすめはね、やっぱり写真に撮って映えるのは……」  メニューを見ながらうれしそうにしているマナブにかけた弘樹の声は、暗く尖っていた。 「……あなた、本当は俺をどうしたいんですか?」  口にしてから、しまったと思った。徹夜のせいでイライラしていてつい目的を忘れていた。 「あ……あ、ごめんなさい。そうじゃなくて……」  マナブは一瞬表情を消したがすぐにまた笑顔になるとメニューを置いた。そしてテーブルに頬杖を着くと、うつむいた弘樹に話しかける。 「もちろん気がついたときはショックでしたよ。僕は最大級の信頼を寄せて、あなたにあの漫画を見せたんですから」 「あっ、ごめんなさいっ! でも、わざとじゃなくて本当にいいと思って……」  必死に言い募る弘樹の頬に、すっと身を乗り出したマナブの指が触れた。  びくっと身を引く弘樹に、まるで泣き笑いのように顔を歪めながら彼は言った。 「そんな顔しないで? それであなたへの熱が冷めるかとも思ったけど、そんなことはありませんでした。六機さん……昨日は眠れた? 目の下、少し隈になってる」  壊れ物のようにそっと指先で目の下をなぞられる。触れられた場所から電流のようにむずむずする感覚が走った。全身に回るそれを必死にこらえながら、弘樹は動くことができずにいた。  マナブの指はすぐに離れていく。 「ごめんね。本当のことを言うと、あなたとこうして今一緒にいられるのだから、あなたが僕の漫画を使ってくれてラッキーだと思っているんです」 「え?」 「今までは一方通行でした。僕はただのファンだからそれが当たり前だし、それで十分だと思っていたんです。ずうずうしくあなたに近づいたりするのは嫌だった。そういうファンはちょっと嫌いだったな」 「…………」
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