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 誰かに受け取って欲しい。弘樹の好きを受け取ってほしい。そして返してほしい。同じだけ返してくれればいい。  好きだ、とただそう言ってほしいんだ。 「マナブ……」  名を呼んだのは無意識だった。  しばらくそう口にした自分の気持ちを探してぼんやりしていた。次の瞬間ぎゅっと胸がしめつけられた。下火になっていた涙がまた盛り上がってはぼたぼたと落ちていく。 「マナブっ、最悪。ばか、ばか、ばか、死ね。最悪なんだよおまえっ!」  高ぶる感情のまま最後は叫ぶように言う。そのとき、唐突にビデオ通話の着信を告げるチャイムが鳴った。  びくっと肩が上がる。驚きで動けなくなった身体に、どくどくどくと倍速になった鼓動が響く。確認した時刻は深夜一時だった。なんでいつもタイミングよく連絡してくるんだ? こんな時間にかけてくるのはひとりだけだ。  チャイムは鳴り続けた。しかし迷っているうちにぷつりと終わった。  さっきから少しも姿勢の変わらない弘樹だったが、動揺で額には冷や汗が浮いていた。じわじわと苦い後悔の味が舌の根本から広がってくる。出れば良かった。もうじゅんぶん時間を置いたしきっと彼も反省している。だから連絡してきたのだろう。だが、いやいや、とそれを否定する声も聞こえる。またカモにしようと思っているのかもしれない。会って優しくされたら、自分にそれが見極められるのか? 裏切られて捨てられて、もっと嫌な思いをするんじゃないのか?  めまぐるしく考えていたそのとき、マウスに手が触れて暗くなっていた画面が再び表示された。開きっぱなしのSNSのマイページには、メッセージが届いたことを知らせるアイコンが新しく灯っている。  風呂上がりそのままだったせいか身体が冷えきっている。こわばった手で恐る恐るクリックした弘樹が目にしたのは、思っていた通りマナブからのメッセージだった。本文は二行だけ。 『おひさしぶりです。元気ですか?』  続くのはSNS上の作品ページへのリンクだった。慎重にポインターをあわせる。  ぐっと下唇を嚙みながら開いたその先にあるものを、弘樹はうすうすわかってはいた。そしてやっぱり予想通りの絵が目に飛び込んできたとき、たまらずページごとブラウザ自体をすべて閉じてしまった。  いてもたってもいられなくなって椅子から立ち上がると、すぐ横にあるベッドに飛び込むようにうつ伏せになる。ギシッと壊れそうなすごい音がしたが気にせず枕に顔を埋めた。 「そんなの無理だって!」  バタバタと足を上下させ、身体をくねらせてこみ上げてくる感情を放出させる。無駄に暴れてぜーぜー息を荒げながら弘樹はまたつぶやいた。 「もう、しねえもん。パクるとかしたくねえもん」  口にするとまた心が揺り動かされて涙がでそうになる。
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