Wherever you are,whoever you are.

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 弘樹は無防備に日々の出来事をSNSにアップする。そこから彼の動向を特定し、彼に会いに行くのはたやすいことだった。  最初はただのツーリストとして大学生の彼を見た。はじめて会った日から変わらない彼。とても幼く見える。つまらなそうにひとりで大学を出て歩き始めた彼に声をかけたい衝動を押さえるのは大変だった。うかつに声をかけて警戒されたらすべてが水の泡だ。  僕は彼自身の熱烈なファンだ。  望んでいるのは、ただ一度言葉を交わす事じゃない。親しく名前を呼んでもらえるような関係になるために、慎重に計画を立ててその通りに実行しなければならない。  父親の大反対を押し切り日本で暮らしはじめてからも、僕は弘樹を見守り続けた。弘樹はあまり優秀なビジネスパーソンではないらしい。どうやら会社内で自ら孤立して居心地悪そうにしている様子に、ついお節介なアドバイスをしてしまったこともあった。だがSNS上のいちファンとして交流し、十分信頼関係を築けていると感じてはいた。  そんな日々を送るうちに、いつの間にか僕の心は変わっていく。彼に会うのが怖くなったのだ。  僕は、自分がただのファンでいられなくなっていたことに気づいていた。  僕は弘樹が好きだ。  彼のことを考えると苦しくて、切なくてたまらなくなる。キスしたいし抱き合いたい。彼をひとりじめしたいと思う。  しかし、彼が好んで描くのはいつでもバストの重そうな美少女だ。そんな女性のイラストに、かわいいとかつき合いたいとか無邪気にコメントをつける。  今のところは彼のそばに生身の女性の影は無い。だがいつ彼女ができたっておかしくはない。最悪結婚なんてことになったら、僕は自分がどうなってしまうのかわからなかった。  もう何年も見てきた。  これからも僕はこうしていられるだろうか?   弘樹が変わってしまったとき、後悔せずにいられるだろうか?  我ながら度を越した思いつきだと思う。  でも今行動すれば、可能性が無いとは誰にも言い切れない。  僕は弘樹の事を良く知っている。  彼は今、オリジナルの漫画が描けなくて悩んでいる。絵を描くのは得意じゃない。だけどシナリオを考えることは難しくはない。世の中にはドラマを作るためのハウツー本がたくさんあるじゃないか。それさえ読めば自分にもできそうだと感じていた。  もしこの計画に弘樹が乗ってくれたなら、僕は必ず彼を手に入れる。  少し嫌な思いもさせてしまうかもしれないが、間違いなくうまくやるから問題ない。  卑怯な手も使うけど、弘樹――わかって欲しい。  Wherever you are,whoever you are.  この本をプレゼントされた時から、ただずっと、僕は君が好きなんだ。
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