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 その時のイライラを思い出し、生方は悔しそうに歯ぎしりをした。  そうして、ふと気になった事を訪ねる。 「……何でオレが、一睡もしてないと分かった?」 「そりゃあ、そんなに目が充血していたら、寝ていないんだなと分かるさ」  兎のように目が真っ赤になっている生方に、安住は両手を合わせて「すまん」と謝罪する。  そして御機嫌取りをするように、パチリとウィンクをした。 「お詫びに、オレが何か簡単なものを作ってやろう。冷蔵庫とキッチン、借りるぞ」 「勝手な事を――」 「でも、腹が減ってるだろう?」  確かに、味のしないフレンチを食ってからずっとロクなモノを食べていないので、生方は空腹を覚えていた。  しかし、何でこんな男が作った物を、わざわざ食べなければならないというのか。  生方は不機嫌そのものの顔になると、ベッドから降り立った。 「要らない。オレは外で食べて来る」 「おい、意地を張るな」 「うるさい。それと、お前!」 「ん?」 「外出した時に、ここのスペアキーを作っただろう?」  ジロリと睨むと、安住は悪戯を咎められた子供のように肩を竦めた。 「なんだ。流石にそのくらいはお見通しか」 「お前が抜け目のない野郎だという事は、オレも知っているからな」  生方は苦々しく舌打ちをすると、素早く外出の支度をする。  そうして、もう一度安住をキッと睨んだ。 「約束だからあと二日だけここに滞在する事は許可するが、合鍵はNGだ。業者に電話してすぐにでも取り替えてもらう」 「おい、そんな大げさな……」 「赤の他人に勝手に鍵を複製されては、安心して生活できないからな。フン、無駄骨だったな」  留飲を下げたようにせせら笑うと、「客室は自由に使っていいが、それ以外は勝手に漁るなよ」と釘を刺して、生方はマンションを後にした。
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