101.一緒に、戦ってくれる?

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 鬼畜野郎は服の塊を抱えて外に出ていきかけていたが、あたしの言葉にピタリと足を止めた。ゆっくりと首をめぐらせ、血走った目であたしを上方から睨み下ろす。 「……おまえ、俺と今夜一晩、一つ屋根の下にいるつもりなのか?」  含みを持たせたその言葉にゾッとした、刹那。  鬼畜野郎の巨大な右手が、いきなりあたしの前髪をわしづかみにした。 「……⁉」  一瞬、何が起きたのかわからなかった。  心臓が縮み上がり、背筋が凍り付いて、精神活動が数刻完全に停止する。  鬼畜野郎は自分より十センチほど背の低いあたしの顔を強制的に上向かせ、酒とタバコが程よくブレンドされた生臭い息を超至近距離から吐きかけながら、地を這うような声音で言葉を継いだ。 「俺も今夜、ここに泊まって片付けをしなきゃならねえんだよ。おまえがどうしてもここにいてえってんなら別に止めねえが、このムカつくツラを俺の前にさらし続けた結果、何が起こるかわからねえってことだけは予め言っておくからな」  深い憎悪のたぎる、黄色く濁って血走った目。その目に射すくめられたとたん、心臓が凍り付いて身動きひとつすることができなくなった。掴まれている前髪の痛みすら感じられない。臆病な右手が震え始めて、思わずクマるんをきつく握りしめてしまう。  鬼畜野郎はそんなあたしを睨めつけながら、忌々しげに奥歯をきしませた。 「この顔……こんなもんを一晩中眺め続けてたら、抑えきれる気がマジでしねえわ……あの女が死んだのだって、ある意味おまえが原因みたいなもんだからな。手を出さないですませられるかどうか、正直、俺もよくわかんねえんだわ」 ――え?  その言葉に、恐怖で竦みかけていた思考がたどたどしく回りだす。 「おまえが原因って……どういう意味?」
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