102.コイツに謝れ!

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 鬼畜野郎の言葉が何を意味しているのかは、はっきり言ってよくわからない。  あの男ってのは恐らく柴崎泰広の父親で、あいつってのが死んだ母親で、死んだ父親のことが忘れられなかった母親は最後まで鬼畜野郎に心を開かなくて、そのために鬼畜野郎の計画は失敗に終わり、その全てをこの鬼畜野郎は、父親似だった柴崎泰広のせいで引き起こされたことだと思いこんでいる。  あの発言からあたしに推測できるのはせいぜいその程度で、実際のところ彼らの間に何があって、どんな過去をひきずっていて、どんな思いを抱えてこれまで生きてきたかなんて、そんなことまでこの短い言葉から推測しろと言われても、んなことはどだい無理な話なわけで。  でも、一つだけはっきり言えることがある。   この鬼畜野郎は、最低最悪のゲスだってことだ。  いや、今までだって鬼畜だとは思ってたけど、ここまで完全無欠なゲス野郎とは思ってなかった。  心の導火線に火がついた。これまでずっと心の奥で炭火のようにくすぶり続けていた怒りが、爆発的に炎を上げて燃え始める。 「……人のせいにしてんじゃねえよ」  乾いた唇から、普段より二オクターブ以上低い声が漏れた。 「ああ?」  ずれたメガネを直すこともできずに壁に押し付けられている、見るからに弱々しく劣勢な相手からこんな挑発的な言葉が飛び出してくるとは思わなかったらしい。鬼畜野郎は眉根を寄せると、唇の端をいまいまし気に引きつり上げてあたしの顔をのぞき込んだ。  でも、あたしももう引けないから。 「なんで母親が死んだのがコイツのせいなんだよ。誰がどう考えたって、借金の返済押し付けて無理させ続けたおまえの責任だろ?」 「……んだとぉ!?」
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