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幸せな気持ちでフードコートから離れること約100メートル。
椎名くんは後ろを振り返り、ふうとため息をついた。
「あっぶなかったな、藤川」
「え? 何が?」
「え。気づいてなかったのか?」
椎名くんがびっくりした顔をする。
「さっきの占いの館。入った後で気がついたんだけど、占い一人一回、5000円ってちっちゃく書いてあったんだよ。相性ってことで二人で一回分にしても、5000円の出費は痛すぎるだろ。その半額でも俺は痛いよ。だからうまくイチャモンつけて逃げようと思って。成功して良かったな」
イチャモン?
もしかして、それは私たちが運命の二人だっていうくだりのことか?
つまり椎名くんは5000円をケチるためにそう言っただけだったってこと?
「ああやっぱり、そういうオチか」
私は力無く笑った。
「ん? どうした藤川。元気ないな」
「いや、アンダルシア=はな子の占い、当たるかもと思っただけ」
こんなやつ、最低だから別れなさい! あんたたち、今すぐ別れなさい!
そう言われたことを思い出して、ため息が止まらない。
あの人の言う通り、なのかも……。
すると、椎名くんが私の手をぎゅっと強く握った。
「……当たんねーよ」
椎名くんの手は、ちょっと震えてた。
まるで、私の手を絶対に離さないぞって言ってるみたいに。
「だろ?」
「……うん」
私たちはモジモジして目を合わせないまま、無言で100メートル歩き続けた。
ショッピングモールって、やっぱり最高。
涼しいし、タダだし、運命の人と手を繋いでいつまでも歩けるんだから。
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