椎名くんは信じない

7/7
33人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
 幸せな気持ちでフードコートから離れること約100メートル。  椎名くんは後ろを振り返り、ふうとため息をついた。 「あっぶなかったな、藤川」 「え? 何が?」 「え。気づいてなかったのか?」  椎名くんがびっくりした顔をする。 「さっきの占いの館。入った後で気がついたんだけど、占い一人一回、5000円ってちっちゃく書いてあったんだよ。相性ってことで二人で一回分にしても、5000円の出費は痛すぎるだろ。その半額でも俺は痛いよ。だからうまくイチャモンつけて逃げようと思って。成功して良かったな」  イチャモン?  もしかして、それは私たちが運命の二人だっていうくだりのことか?  つまり椎名くんは5000円をケチるためにそう言っただけだったってこと? 「ああやっぱり、そういうオチか」  私は力無く笑った。 「ん? どうした藤川。元気ないな」 「いや、アンダルシア=はな子の占い、当たるかもと思っただけ」  こんなやつ、最低だから別れなさい! あんたたち、今すぐ別れなさい!  そう言われたことを思い出して、ため息が止まらない。  あの人の言う通り、なのかも……。  すると、椎名くんが私の手をぎゅっと強く握った。 「……当たんねーよ」  椎名くんの手は、ちょっと震えてた。  まるで、私の手を絶対に離さないぞって言ってるみたいに。   「だろ?」 「……うん」  私たちはモジモジして目を合わせないまま、無言で100メートル歩き続けた。  ショッピングモールって、やっぱり最高。  涼しいし、タダだし、運命の人と手を繋いでいつまでも歩けるんだから。  
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!