親友のもとへ

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親友のもとへ

聡の部屋に現れた朝陽。 「聡……おまえって本当にいいヤツだよな」 「朝陽、何言ってんだよ。  まるで別れの挨拶みたいに……。  近いのか? その……消えるの?」 「ああ、恐らく『花火大会』の日だと思う」  と朝陽が呟いた。 「そうか……。で、美緒ちゃんには?」 「美緒もこのことは知ってる。  ちゃんと伝えてる。俺の気持ち……。  あとは……」 「あとは?」 「い、いや、何でもないよ」と言葉を濁す朝陽。 「な~、聡、俺行きたいとこあるんだけど……」 「何処だよ」 聡にこそこそと耳打ちした朝陽、 「仕方ないな……つき合ってやるよ」 そう言うと、朝陽は聡を連れて出掛けた。 ピンポーン。 玄関のドアが開くと、朝陽の母親が顔を出した。 「あら、聡君、どうしたの?」 「え……と、朝陽君が以前、俺から借りてた 本が……  確かあるんじゃないかと……思って」  と呟く聡。 「まぁ、そうだったの……。 あの子ったら、聡君上がって」 と朝陽の母親は聡を彼の部屋に案内した。 「俺、自分で探しますから……大丈夫です」 と聡は朝陽の母親にそう告げた。 聡は、部屋のドアを閉めると、 「はぁ~、やっぱり、嘘はつけないよな」 と軽く息を吐いた。 「そうか? 旨かったぞ。顔ひきつってて」 と朝陽が笑った。 朝陽は、何やら部屋の本棚の隅に立てかけてある 一冊の雑誌の中に挟めてある封筒を取り出す。 「あった、あった」と嬉しそうな表情を見せた。 「聡! じゃあ、行こうか」と言うと聡に 手招きをした。 一冊の本を手に持ち、朝陽の部屋を出た聡。 「あら、本は見つかったの?」と尋ねる朝陽の母親 「はい……これ、見つかりました」  と本を見せる聡。 「そう、よかった。聡君、たまには顔見せてね」 と笑顔を見せる母親に聡は、 「おばさん、聡君、きっと笑顔でおばさんの傍に  いますよ。ありがとうって   感謝してるって……。  そして、おばさんに元気だしてって  言ってると思いますから」 と母親の隣に立つ朝陽を見ながら言った。 「そうよね……。最近朝陽が、  いつも私達の傍にいる……。  そんな気がしてならないの」と呟いた。 「じゃあ、俺はこれで失礼します」 と言うと聡は朝陽と一緒に彼の家を出た。 「おじさんや、おばさん、お兄さんたちにも  おまえの姿見えればいいのにな」 「そうだな……」と朝陽も呟いた。 二人は、ある店の前に到着する。 「なぁ、朝陽……ここに入るの?」 と朝陽の顔を見る聡。 「うん。入るよ」と満面の笑みで 聡を見る朝陽。 大きな溜息をつくと「わかったよ……」と言うと 聡と朝陽は店の中に入って行った。 一時間後、店員に見送られ聡が店から出て来た。 もちろん、朝陽もだ……。 「聡、ありがとうな」とお礼を言う朝陽。 「いいよ。親友のためだ」と呟く聡。 「じゃあ、お礼に焼き肉でもおごるよ」 と朝陽が言うと、「流石に一人で焼き肉はいいかな」 と聡はそう答えた。 「じゃあ、いつも二人で行ってた  お好み焼き屋でいいか?」 と朝陽が言うと、「じゃあ、それで」 と聡が笑った。 二人は、お好み焼き屋ののれんをくぐった。 店内からは、 「お一人様ご案内」と店員の声が聞こえた。
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