花火大会

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花火大会

「美緒、早く、早く」 と待ち合わせの場所に急ぐ智美と美緒。 「あ……いたいた」と智美が手を振る。 そこには、朝陽と聡、そして想汰君がいた。 「二人とも浴衣なんて……いいね~」 と聡が言った。 想汰君が朝陽の顔を見ると 「美緒先生、浴衣姿綺麗ですね」と言った。 「ああ、綺麗だね」 と少し照れたような顔をする朝陽。 そんな、朝陽の姿を見た美緒もはにかむ。 ヒュ~、ドーン、ドーンと花火が上がり始めた。 五人は、花火が見える高台に移動した。 夜空に広がる綺麗な花火……。 次から次へと派手に打ちあがる花火に 五人は魅了される。 美緒も目を輝かせてながら花火を見つめた。 そんな美緒の横顔を見ながら、 朝陽が優しく微笑んだ。 「美緒、今年の夏も一緒に見れたな。花火……。  約束の花火、見れたな」と朝陽が呟いた。 朝陽の声を聞いた美緒は、無言で彼の手を取り、 握りしめた。 朝陽の手の温もりは、まるで朝陽がこの世に 生きているような錯覚を起こすくらい、 温かった。 溢れ出そうな涙をこらえながら必死で  微笑む美緒。 そんな二人の姿を見守る、聡と智美、 そして、想汰君。 ヒュ~、ドーン、ドーンと打ちあがる花火…… 派手に打ちあがり、儚く散っていく花火…… 美しく華開くように夜空に浮かび上がる 色とりどりの光に、魅了される人々。 朝陽が、美緒の手をそっと握ると、 歩き出した。 人気がない場所に連れてこられた美緒、 もちろん、近くには、聡と智美、想汰君の姿。 「朝陽どうしたの? こんな場所に来て」 と美緒が彼に聞いた。 朝陽が、彼女の背後に回る。 「え? 朝陽、何?」彼女が彼に尋ねたその時、 「朝陽……これ……」 美緒の胸元のに光る、 綺麗な星型をしたアクセサリー。 「綺麗……」呟く美緒……。 照れくさそうに朝陽が、 「気に入ってくれたらいいんだけど」    と言った。 「朝陽……これ、どうしたの?」  アクセサリーを見ながら美緒が質問した。 「聡につきあって貰って……その、プレゼント  本当は、あの日、  美緒と一緒に選ぶ予定にしてたんだけど  できなかったからさ……」 「朝陽、ありがとう。大切にするよ」 と胸元のアクセサリーを握りしめる美緒。 「よかった気に入ってくれて」  と笑顔になる朝陽。 二人を見ていた聡、智美も顔を見合わせ 笑顔になった。 そして、想汰君も穏やかな表情で 二人を見つめていた。 花火大会もそろそろ終了する時間が迫ってきた。 美緒と聡、智美と想汰、四人の前に立つ朝陽。 「みんな、この夏も楽しかった。 本当にありがとう」 とお礼言う朝陽。 「俺たちも、またおまえに会えてよかったよ。  朝陽、そろそろ時間なんだろ?」 と聡が言った。 「朝陽君のこと、絶対に忘れないよ。  今年の夏も楽しかったね」 と涙声になる智美。 「俺も、智美ちゃんのこと忘れないよ。  聡をよろしくね」と微笑む朝陽。  そして、朝陽は、聡を抱き寄せると、 「聡……おまえは最高の親友だ!」と囁いた。 「じゃあ、俺と智美はここで、さよならだ。  あとは、美緒ちゃんと過ごしなよ。  想汰……後は、頼んだぞ」  と聡は想汰君の顔を見つめた。  想汰君はゆっくりと頷いた。 聡と智美と別れ、朝陽と美緒、そして想汰君が 歩き出した。
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