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想い出の夏
今年も、暑い夏がやってきた。
「おばさん、こんにちは」
美緒、聡、智美が朝陽の家を訪ねた。
「三人とも、いらっしゃい」
と朝陽の母親が出迎えた。
三人は、朝陽の遺影に手を合わせ、
線香をあげる。
「早いものね……あの子が亡くなって、
もう七年……」
朝陽の遺影を見ながら母親が呟いた。
聡と智美と美緒は、あの夏の日以来
三人の前に姿を現すことのない朝陽のこと
を口にすることはなかった。
「毎年、来てくれてありがとう」
と朝陽の母親が三人にお礼を言うと頭を
下げた。
三人も、会釈をすると朝陽の家を後にした。
喫茶店でお茶を飲む聡、智美、美緒の三人は
いつものように笑いながら話をする。
夕方近くになり、三人は喫茶店を出ると
「じゃあ、また連絡する」と智美が美緒に言った。
「うん、またね。智美、聡君も」
美緒は二人に声をかけた。
二人と別れ、一人家路につく美緒。
神社の前を通りかえた時、前方から白いスーツを
着た男性とすれ違う……。
美緒は、何事もなかったように自宅へ帰宅した。
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