バイトが始まった

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バイトが始まった

「よろしくお願いします」 と元気よく挨拶する美緒。 姉からすすめられて、美緒は 駅前通りにある学習塾での バイトを始めた。 週五日、昼から夜の七時まで 主に小学生と中学生を担当する ことになった彼女。 個別指導をするこの塾…… 彼女も数ヶ月前まではここに 通っていたため、塾長も先生方も 互いのことをよく知っていた。   「美緒さん、じゃあ、今日から 夏休み中 担当してもらう 想汰君」    と言うと塾長が男の子を連れて来た。 「想汰君、今日からあなたを担当する  美緒です よろしくお願いします」  と彼女は笑顔で挨拶をした。   男の子は、美緒を見ると少し 恥ずかしそうに「想汰です」 とペコリと頭を下げた。 想汰君は、小学六年生…… 中学受験のため、五年生の頃から この塾に通い始めたという。 想汰君は、黒いサラサラ髪と 澄んだ瞳が特徴の素直な男の子は、 年齢の割には何処かしら大人びた 印象を受けた。 「この子、モテるだろうな……  大人の女性にも……」 と呟き、邪なことを考えてしまった美緒 「先生?」と彼女の顔を見上げる想汰君の 汚れを知らない顔を見て邪念を追い払う 美緒……何くわぬ顔でテキストのページ を見る。 こうして、大学一年生 美緒の夏休みが始まった。
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