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二人で見た花火……
高校三年生の夏休み……
夜空いっぱいに広がる花火……
「朝陽……綺麗な花火だね……」
と嬉しそうな表情で彼の顔を見つめる美緒。
「ああ、綺麗だな……」
と朝陽も夜空を見上げた。
彼の横顔を見つめる美緒、
トクントクンと胸の鼓動が高まる。
「美緒……来年も花火、一緒に見ような……」
と彼がはにかみながら彼女に言った。
夜空に広がる色鮮やかな花火。
朝陽の瞳に、美緒の瞳に
映る綺麗な花火。
二人は見つめ合うと優しく唇を重ねた。
高校三年生の秋、
その日は、秋風が心地良い快晴の日だった。
美緒は、朝陽との待ち合わせ場所に
一人立っていた。
「朝陽、遅いな~、寝坊でもしたのかな?」
と待ち合わせ時間を過ぎても来ない朝陽を
心配する美緒。
スマホを取り出したその時、
目の前をサイレンを鳴らした救急車が
通り過ぎて行った。
歩道に飛び出した男の子を助けようとした
男子高校生が車に跳ねられたらしい。
美緒の近くを通り過ぎる人がそう話していた。
この日から、朝陽は二度と美緒の前に現れることは
なかった。
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