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 三週間後の週末、絵里子は驚いていた。  内科医の彼から話があると呼び出され、別れ話を切り出されたからだ。 「ごめん。絵里子さんとは結婚できない」  新宿のマリアの占いどおりだった。  占いの結果に納得していなかった絵里子は、結婚する気があるのかと、これまで以上に彼に迫っていた。結婚が叶わないなら、こんなつまらない男と付き合っている意味がない。絵里子にとっては当然のことだ。  彼は絵里子を傷つけないように言葉を選びながら、結婚できない理由を説明したが、その気遣いがかえって、絵里子のプライドを逆撫(さかな)でした。 「なんか勘違いしてるみたいだけど、あなたにフラれたぐらいで落ち込みも傷つきもしないわよ。冗談じゃない」  絵里子は目を丸くして唖然とする彼を置いて、さっさと店を出た。  冴えない勤務医にフラれたことに無性に腹が立ったが、新宿のマリアに対する驚きの方が優っていた。畏怖(いふ)の念といっても大袈裟じゃない。  たしかに新宿のマリアは「ひとつき以内に結果が出ます」といっていた。  これほどの的中率なら、彼女のお告げに従っていれば失敗はない。通常コースだと、また三ヶ月後の予約になるが、ファストパスを買えばショートカットができる。出費は(かさ)むが、それだけの価値はある。  絵里子はスマホで新宿のマリアの公式ページを開き、ファストパスの代金三万円を迷いなく振り込んだ。
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