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明智光秀の刃が、俺の腹を貫いた。こみ上げる血の気配。それを感じた次の瞬間には、口から血が漏れ出ていた。
「ふふふ、はははっ」
「何を、笑っている……?」
不気味で仕方なかったのだろう。明智光秀は、刺した刀をそのままに、後ずさりする。
「あはははは!」
痛みで涙を流し、狂ったかのように笑い続ける。苦しい。だが、そんなものは些細なこと。やっと、やっとだ。これで天下統一が成される。明智光秀が天下人になるかまではわからない。しかし、俺以上の悪が天下人になる可能性は低いだろう。
「ば、化け物!」
明智光秀は恐れを成して逃げ出す。もう、ここも長くは保たないだろう。
一人になり、俺は泣いた。笑顔はもう必要ない。声を殺すように泣く。
果たしてこれは、誉れある死だったのだろうか。誰にも理解されず、後世にこの事が記されることもない。だが、俺は成したのだ。俺の死で、成し遂げた。こうするしか……なかった。
「是非もなし」
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