2・アイドルがいる国へ

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透明なソファが静かに床に降りた。 あまりにも美しくあまりにもリアリティのある説明だった。 この説明につかった部屋にも、その神たちにも感動した。 なんて素敵なんだろうか。 わたしが呆然としていると、リュカに小突かれる。 「メイリア、もう放してもらえるかな?」 始まりからずっとリュカの腕を握ったままだった。 この透明なソファはずっと動いたのだ。 山が生まれれば地響きがして、上にあがるし、 水が流れれば風とその流れのスピードにあわせてと 臨場感あふれるものだった。 「あ、ごめんなさい。」 「ん?今度は大きな声出して騒がないんだな。」 「あ、うん。もうなんか力抜けちゃって。  イルミナ教にも、このソファにも驚いてる。」 お父さまをはじめとした家族についていろいろな国に行った。 どこかで、もう自分が知らないことって もうあまりないのかもしれないと 少しおごっている部分すらあった。 なのに、なんなのこれは? お祖父さまだったら装置を作ることができるかもしれない。 でも、こんな大きな部屋で何も装着することなく、 こんな体感を得られるものなんてある? なかなかできることなんてない。 今まで、出会ってきた魔法使いが使う魔法とも違う。 そう思ったら、体が震えて笑えて来た。 「おいおいおい、どうした?ぼおっとしてると思ったら  今度は笑って。なぁ、グレッグじいなんとかしてくれよ。」 「おやおや。初めてで少し刺激が強かったですかね?  よそから来る人はこうなることもあるんだけど、  彼女は問題ないはずだけどね。」 グレッグは首をかしげて、不思議そうに、メイリアを見た。 リュカもほわーっとしたメイリアを見つめる。 ふたりの不思議そうなまなざしにようやく意識が戻った。 「ようやく戻ったようですね、そうしたら次の部屋に行きましょうか。  次の部屋は今の不況についてです。」 真っ白な部屋から出ると、 今度は自然光がさガラス張りの部屋で、外が見える。 入口から見えていた、人だかりには3つあった。 「あそこに3つの祭壇があるのがわかりますか?」 よく見ると人だかりの奥には小さな階段と祭壇があった。 その祭壇の上には光の柱が立っている。 「その祭壇の上には光の柱があって、  この光の柱は大聖堂につながっています。」 「この祭壇にはなんでこんなに人が集まっているんですか?」 祭壇には絶え間なく人がいる。 普通ほかの教会でもこんなにいないのだ。 祈る人がちらほらいるものだ。なのに、この祭壇には人がいっぱい。 「先ほどお伝えした、神さまを覚えていますか?」 「太陽の神カリヒさま、月の神ラヒトさま、水の神クロンさまでしたよね?」 「そうです、その3人です。よく覚えていますね。さすがですね。 神さまごとに祭壇がありまして、 神さまへの愛や想いをつたえる儀式が日に3回行われているんです。 それとは別に各神さまの記念日なんかでも大きな儀式が行われます。」 「え?一日に3回もあるんですか?」 「はい。これでも減ったんです。 昔は3の倍数ならいくらでもやりなさいってなっていたんですが、 ここ数年で科学も進んだこともあって、 エネルギーの効率が良くなったので3回になりました。」 「儀式はどのようなことをしているんですか?」 「そろそろ2回目が始まるので、実際に見にいきましょうか?」 グレッグさんがガラスの一枚に手を当てると、 扉が開いて、中庭に出れた。 実際に行くとそこにいる人の熱気が伝わってくる。 そわそわとしているわたしの背中をリュカがポンとたたいた。 「大丈夫か?ちょっと人が多いから、きつくなったら言えよ?  って、おい、なんて顔してんだよっ。」 「あ、ごめん。優しいんだなと思ったら意外で驚いちゃった。  ありがとう。」 チっと舌打ちをして、リュカは下を向いた。 子どもみたいに期限を損ねてて笑ってしまう。 「おい、今度は何で笑ってんだよ。」 「大人っぽいと思ったら、  今度はすねてかわいいなと思って。ありがとうね。」 そう言って、リュカの腕をポンポンとたたくと、 いい意味ならいいと言ってリュカはまた機嫌を直して わたしの隣に立ってくれた。 グレッグさんが笑顔でわたしたちを待ってくれていた。 「まずは、カリヒさまから見に行きましょう。」 カリヒさまの扉をグレッグが開くとそこはもう、キラキラな世界だった。
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