2・アイドルがいる国へ

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「やっぱりメイリアさんは  来るべくしてきているんだわ!」 さっきゆったりとした表情だった フジさんが、がたっと立ち上がった。 「もうぴったりですよ!  あの木と湖の間のあの土地に  突然住むことになって。  代々の決まりで。  しかも、これだけの聖力の量ですよ!  あの伝説の聖女でしかないでしょー!  この歳にしてようやくあの伝説が目の前に!  はぁー。」 フジさんは興奮して話していたかと思ったら、 今度はふらっと倒れこみそうになるのを 周りの人が支える。 何が起きてるんだこれ、なんかカオスすぎて わたしは笑顔が顔から外せそうにない。 まともだと思っていた人すら 伝説とか叫んで倒れるし、 一体何が起きているのやら。 深呼吸をして聞いてみる。 「あの、伝説ってなんですか?」 「この街には聖女の伝説があるんですよ。  この街はメイリアさんの家のそばの湖を  中心にして作られたんです。  でも、昔一度この湖が枯れかけた。  その湖を元に戻し、教会やエネルギーの  循環を組み立てたのが聖女さまでした。  それから何百年かに一度聖女がこの街に  導かれるようにやってきて、  この街のエネルギー循環を正しいものに  してくださると言われてるんです。」 聖女の伝説か。 色々な場所にお父様たちと出掛けていた時に 何度か耳にしたことがある。 伝説って各地に色々とあるのよね。 そうか、ここは聖女か。 「聖女伝説ですか。各地を巡ってある時に  他の場所でもきいたことがあります。  聖力の強い人が、国を救ったとか。  人々の疫病をすべてなおしたとか。  自然現象を起こしたとか。 異世界から来た人もいるとか。  まぁ、どれも伝説は伝説で。  時々強い力をもった人が奉仕活動を  していた程度しか見たことなくて。  なんか本当かなぁって  ずっと思ってたんですよね。」 「メイリアさんはあまり 信じてらっしゃらないんですね。」 「比較的にこう見えて現実主義なんで、  しっかりと見ないと  なんともわからないなぁって 思ってます。グレッグさんはわたしが 聖女だと思いますか?」 "こう見えて"に対して笑ったリュカの腹を ひじでこづく。 こいつこんな時にふざけやがって。 「わたしも現時点ではわからないですね。  確信がもち切れるまではそうだとは  言えません。」 なんだグレッグさんも そう思ってるんだと思って ふぅとため息をついた。 「なので、今から簡単なテストを 受けてくださいますか?」 「テスト?」 「はい。テストを受けてもらいます。  それは特に大変なものではなくて、  ただこの石に触れてもらうだけ  なんですけど。」 グレッグさんがわたしの前に出したのは 濃いブルーをした手のひらに 乗るくらいの石だった。 すっと差し出されたので、 思わず手のひらを上にして石を受け取った。 その瞬間、頭の中に声が聞こえる。 『あなたは聖女です。321年ぶりの聖女よ、  あなたの力でこの国の民をよりよく  してあげなさい。さぁ、働くのです 。』 え!すごいわ! ここにわざわざきた理由は 運命のパートナーじゃない! 聖女として働くことだったのね! と思ったら、 わたしは身体中に電流が走った。 思わず大きな声で石に話しかける。 「いったー!!え?なに?これ、あなたの仕業?」 『いえ、わたしはそんなことは していません。そんな聖女に 罰を与えるようなことはしませんよ。』 「え?じゃあどういうこと? あなた、わたしが今どういう状況か 確認できる?聖なる石なんでしょ?」 『はい、では確認しましょう。』 わたしは石の青い光に包まれる。 ブゥゥゥゥウウウン 『あなた、なにか制約してますか?』 「ん?制約?いや、特にこんなことに  なるようなものは・・・・・。」 ん?いや、まさかまさかでしょ? えー、うそだよね? え?こんなことまで普通する? いやいやいやいやいやー。 「あのグレッグさん、すみません。  少し家族に確認したいことがあるので  連絡してもいいですか?」 「はい、大丈夫ですよ。」 「では少し失礼。」 わたしはカバンの中に入っていた 連絡器を取り出した。 コンパクトくらいの機械をパカっと開く。 ふっと一度息を吹きかけて、連絡したい人の名前を呼ぶ。 そう、もちろんあの人の名前を呼ぶ。 「おとうさま。至急出てください。」 コンパクトの内側がぼんやりと動き始めて、 お父さまが映った。 「メイリア、どうした?もう何かあったのか?」 「お父さま、今隣町のイルミナ教の教会にいるの。そこでね、まぁいろいろあって確認してもらったら、わたしには何か制約が掛けられてて、そのせいで何かに反応して身体中に電流が流れるような痛みがあるんだけど。まさか、これって。」 「メイリア!もしかしてまだ1日目で  もう働こうとしてたのか!?」 「お父さま、やっぱりそうなのね。 これは一族のあの制約からくる苦痛なのね?」 「約束を破ろうとした時に  そのものは雷やや打たれたような痛みに  苦しむと言われていたが実際になるんだな。」 「お父さまもよく分かってなかったの?」 「当たり前だろ。お前よりも前なんてそうそうこんなこと起きなかったんだから!この親不孝ものめ!」 お父さまがハンカチを噛み締めるのなんて見てられないわ。わたしの方が辛いんですけど。 こっちが泣きたいんですけどぉー。 もう! 「他にも何かあるのかわからないんだから、  その制約が書いてある本をわたしにも見せて。写しでもいいから。」 「わかった。そうしたら、  本のデータを10分後に転送しておくな。」 そう言って通信は切れた。 はぁ、もう制約で身体に電流走るとか聞いてないんですけど! 「すみませんが、15分後に父から来るデータをまって改めて話させてください。」 そう言って、わたしは椅子に深く座った。 もう、あー!
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