1・先祖のおかげで無職

5/5
前へ
/25ページ
次へ
そのあとはお父さまはしくしくと泣いている。 妹のリリィはお姉さま行かないでーと泣き叫ぶ。 お母さまはわたしの次に住む場所について私に楽しそうにはなして、 おじいさまはおばあさまとゆっくりお茶をしながらいちゃついて。 え?なに、なんなのカオスなの状態。 でも、とりあえず、おちついてわたし。 深呼吸ー。 して、 レイとアラティを招集して、引き継ぎもした。 ふたりは事前に聞いていたみたいなので、 サクサクとしていて、これから一年の計画の共有だけくらいでよかった。 「レイ、アラティ本当にごめんね。」 「いいよいいよ、だっておうちのしきたりなんだし。  正直、メイリア休まなすぎってのも思ってたしね。ねぇ、レイ?」 「うん、メイリアってバカなのかと思った。 みんなに言われてもやらないんだから。」 「もう、レイ!メイリアにバカとか言わないの! 集中しちゃうと何も見えなくて、  ポンコツになるところがかわいいんだから!」 ふたりにバカやらポンコツやら言われてるわたしっていったい。 ふたりのリーダーなんだけど、ひん! 「メイリアいなくても困らないけど。ずっといたからさみしいな。」 レイがぽそっとつぶやいた。 「え?レイ、なんて言った?もう一回言って?  ねぇ、アラティも、わたしがいなくてどうおもってる?」 「いや、もう、その質問の仕方、  ちゃんとレイがなんて言ったか聞こえてるじゃない。  もう、メイリアがいなくてわたしもさみしいよ。  だから、早く最愛の人ってのを見つけてかえっておいで。」 笑いながらそう言ってくれるアラティを思いっきり抱きしめた。 涙が出てくる。というかもう泣いてる。 「うん、がんばる。もう、ふたりに会えないのも働けないのも  さみしいよー。ほかのみんなにもよろしくね。レイも。ほーら。こっち。」 泣きながら、レイを求めて宙をかくわたしに はぁ、と言いながら口をへの字口にしつつ、 頬を少し赤らめてしぶしぶこちらにやってきたレイを しっかりハグした。 「仕方ないなみたいな感じだしたなー、レイー。」 といって、ぐりぐりとより強く抱きしめた。 ふたりに任せれば大丈夫。 こんな仲間がいてよかった。 そのあとは あれよあれよと荷造りや準備が進んでいき、翌日になった。 それが今ね。 荷物のほとんどはすでに運び込まれて、 わたしはボストンバックの中に 机の上にあった仕事につかうもの以外をがさっと入れてきただけ。 だから、すかすか。 仕事に関するものはすべて却下、 家からの持ち出し禁止。 ちょっとした資料も、 家を出るときにおかあさまの荷物チェックにあって没収。 そして、そのかわりに持たされたのが、 恋愛小説を5冊。 「メイリア。これからあなたのミッションは無職を貫くこと。  でもね、一番のメインは最愛の人を見つけることよ!  ロマンスがミッションって本当に素敵。この本はそんな  あなたにピッタリの本なの。  これは、働き者だった令嬢が、異国の国で王様に求婚される話。  これは、町に降りたら、そこで出会った本屋の彼と大恋愛。  もう、あなたがどんなロマンスがあるのかと思ったらわたし、もう。」 お母さま大興奮。恋愛小説やロマンス大好き、いやオタク。 娘の今後を想像して、こんな過呼吸になるなんて。 「報告の日を楽しみにしているからね。あなたなら、行けるわ。  年の差ロなマンス物も入れておいたから♪」 と、そんな感じで家の門をようやく出た。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加