⑪13番目の呪われ姫は運命と出会う。

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「で、卒業後海外で活躍されていた殿下が帰国されて、わざわざこんな貧乏貴族を訪ねてくるなど一体何用です?」  王立学園にいた頃ならともかく、卒業してしまえば本来雲の上の人間であるレグルと伯爵が関わる事はない。  訝しげな視線を隠す事なく向けて来る伯爵に、 「お、ようやく話を聞いてくれる気になったのか?」  レグルはベロニカが出したハーブティーを優雅に飲んで、 「今の王政を……つまり、今の陛下を失脚させようと思う。キース、お前のその賢い頭を貸して欲しい」  まるで買い物にでも付き合えとばかりに気軽にそう言った。 「は? 嫌だけど? 反逆なら勝手にやってください」  またこの王子はと伯爵は嫌そうな顔を隠す事なく、舌打ちする。 「まぁそう言うな、お前だって今のまま陛下にこの国を任せていてはマズい事くらい分かっているだろ?」 「だからと言って俺にできる事は何もない」  巻き込むなと伯爵はキッパリ断る。 「そんな事はない。お前ほどの逸材はそういない」  伯爵が簡単に頷かない事は想定の範囲内だったのでレグルはへこたれる事なく淡々と話を続ける。 「在学中に数多の学者が解けないと嘆いていた難解な古文書を解読し、数多くの歴史の謎も解き明かし、新しい理論も構築して見せた。キースは先見の明もあるし、目端が利く。本来であれば国の研究機関に高待遇で迎えられていたはずだ。君の祖父や父と同じように」 「……過ぎた話です」 「父親の冤罪を晴らしたいとは思わないか?」 「特に興味ありません。自身の研究に没頭し過ぎて、まともに領地の経営もせず、かといって降りかかる火の粉に対して何の対策も取らず、挙句領地を潰しかけた父の一体何を晴らせと?」  俺はそんな事では動きませんと黒曜石の瞳は興味なさそうな色を浮かべる。 「それに俺は今"呪われ姫"の研究に忙しいので」  伯爵は自身の首にかけられている"売約済み"のプレートを指で引っ張る。 「何せ俺は今、姫の専属暗殺者なもので」  現在自身の身柄はベロニカに拘束されているので、反逆に加担するほど暇じゃないと伯爵は取り付く島もなく首を振る。 「キース、頼む。お前の力が必要なんだ」 「他を当たってください。俺にも守らなきゃならないものがあるので」  縋り付く王子様相手に嫌ですと強固な態度を崩さない伯爵。 「あのぉーお話中すみません♪当店密談するにはたーいへん、向いてると思うんですけど」  ぼったくりBAR"離宮"の主人もといベロニカが緊迫した雰囲気をぶち壊し、2人の間に割って入った。
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