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このカバンの中には、昨日の深夜に盗んだばかりの現金が少々入っている。
銀行に預けようと思っていたところ、伊藤に声をかけられたのだ。
「まあ設計って言っても、責任を全部任されてるわけじゃない。まだまだ新入りみたいなもんだからな」
そう言って伊藤は屈託なく笑った。
俺は今年、二十五歳になる。こいつもなかなか頑張っているんだな。そう思うと、泥棒なんてやっている自分がちょっと恥ずかしくなる。
注文したアイスティーがテーブルに運ばれ、一口音を立てて飲んだ伊藤が身を乗り出して訊く。
「ところでさ、投資ってそんなに儲かるのか?」
「いや、人によるよ。俺なんてまだまだ素人に毛がはえたようなものだから、儲けは少ない」
出まかせを言いながら、アイスティーを一口すする。
窓の外では、人々が真昼の太陽光を浴びながら、せわしなく歩いていた。
「なあ島田。ひとつ頼みがあるんだけど」
「なんだ?」
「お前の投資に俺も加わらせてもらえないかな?」
まずい……。
俺は投資のことなんて、ほとんどわからない。
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