奇遇だな

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 それがバレると、無職だということが発覚しそうだし、下手をすると俺の犯罪のことにまで話が及ぶかもしれない。  なんとかうまいこと言って断らないと……。 「ダメだよ。俺は仕事とプライベートを一緒にしないタチなんだ」 「そんなこと言わないで頼むよ。俺も以前から投資ってものに興味があってさ。同じクラスで三年間過ごした仲じゃないか」 「いや、悪いけどダメ。それに俺の一存じゃ決められないし」 「じゃあ、お仲間に訊いてみてくれよ。頼む、この通りだ」  伊藤は俺に両手を合わせて、ぐっと頭を下げる。  これは話が変な方向に進みだしたぞ。  俺はズボンのポケットからスマホを取り出した。 「わかったよ。今から電話して、仲間と上司にちょっと訊いてみる。でも、多分ダメだと思う」 「すまない、島田。ほんとうに感謝するよ」  俺は立ち上がった。 「通話の内容は伊藤には聞かれたくないから、ちょっとトイレに行ってくる。あまり期待しないで待っててくれ」  スマホを片手に、店のトイレに入った。  便器に腰かけ、そのまま五分ほど待つ。  ふう……なんとか難局を乗り切ったな……。  これでいい。話は打ち切りになるのだ。
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