何も考えていない人間の醜さ

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 船橋さんが森先生に助け船を求めている。そんな逃げは許したくなかった。 「そんなに研究に反対しているのに、どうしてやっていたのですか?」  鍋が沸騰する音だけが室内で幅を利かせていた。船橋さんも森先生も野菜みたいにクタクタだ。 「そりゃあ、男というものは、嫌なことでもやらないといけない時が来るんだ。そうですよね、森先生?」 「そういう一面もありますよね」  微妙にピリついた空気を除けるように二人の大人は箸を一生懸命高速で動かしている。 「船橋さんはお父さんとは仲良かったんですか?」  今まで溜め込んだ悪感情を解消するために、疑問をぶつけないといけなかった。ボクの周囲の世界に光源になりそうな物がないか徹底的に探す。それに不愉快な思いをするのがボクだけだと嫌だった。 「仲は良くなかったね。あんな男と仲良くしていたらこっちの株まで下がりそうだよ」 「じゃあ、何で今一緒に焼肉屋をやっているんですか?」  無視で逃げようとする船橋さんの横顔は顎の贅肉が揺れて目立った。ボクは絶対に誤魔化されたくなかった。どうでも良い人間は徹底して追い詰めたくなった。 「船橋さん、だってお父さんと一緒に働く必要なんてないじゃないですか。どうしてなのですか?」  追撃がいけなかったみたいで、卓袱台の上に拳を振り下ろされた。 「うるせえ、ゴミ人間の子供が。てめえは今すぐ苦しんで死ね。てめえさえいなくなれば、あの研究は継がれずに失敗に終わってくれるんだよ。てめえが今すぐいなくなってしまえば、世界平和は約束されたみたいなモンなんだよ」
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