お父さんの思う正義、人間の罪と役割

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お父さんの思う正義、人間の罪と役割

 森先生と夕陽が差す田舎道を歩く。右側に瓦屋根の家が続き、その中の一つに和馬君の家がある。放課後、なんと和馬君が家に戻って来たと森先生から聞いた。  事情を知っている生徒はボクのみなので、ボクも一緒に会いに行こうと先生に直接言われた。和馬君がどこに行っており、なぜ帰って来たのかまだ何も分からない。  だが正直、ボク自身も何だかフワフワしていた。朝起きてから寝るまでずっと目が回る。ふとした時になぜかレイチェルの泣いた顔が空間に浮かんで見える。  森先生がインターホンを鳴らすと、和馬君のお母さんが迎え入れてくれた。予想通り痩せて顔色が悪い。元の顔も知らないが、憔悴していると容易に分かる。  玄関から階段のある方へ廊下を歩いていると、途中で和室へ入る襖が開いていた。その中に段ボールでできた不可解なオブジェが安置してあった。つい気になって、無断で敷居を跨いで大規模な夏休みの自由研究の作品みたいな物体に近づいた。  見ると、平たい段ボールの上にもう一つ段ボールが置いてあった。上にある段ボールは蓋が両開きになるようにおいてあり、中に不揃いな大小のお椀が置いてあった。お椀の中には袋に入ったミニカステラやクッキー、おかきが入っていた。お椀以外にはゾイドが一匹、その横には誰かの似顔絵が入った写真立てがあった。 「これは何ですか?」  先生が無遠慮に和馬君のお母さんに尋ねた。何となく触れてはいけない物だと気づかないのが、森先生の性質だ。 「これは、あの子が言うには、お兄ちゃんの仏壇みたいです」  ボクは和馬君のお兄ちゃんと聞いて、中山霊園や人肉館にで幽霊を見たと和馬君に教えた人物だと気づいた。だが、どうして図画工作みたいな仏壇になっているのか。 「和馬君にはお兄ちゃんはいるのですか?」 「いえ、うちは一人っ子です。お兄ちゃんが欲しかったのかなって思ったのですが、そんな話一度も聞いていなくて。本当に何でこんな子になっちゃったのか」  和馬君のお母さんが取り乱し始めたためか、森先生はそそくさと階段を上って和馬君の部屋がある二階に向かった。ボクたちも後を追った。階段を三人分の足音が響く。きっと和馬君は怖いだろう。
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