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沈黙を貫いた。ここで和馬君を不必要に刺激する必要はない。
市道から山道に入って「生きる希望を与える店」が見え始めた。お父さんの言う「生きる希望」が何か分からなかったが、今では何となく分かる気もした。
悪目立ちするくらい鮮やかな緑色に塗装されたドアの前まで行くと、お父さんが仁王立ちで待っていた。
「おっ、和馬君も来てくれたのかありがとうねェ」
お父さんは和馬君の頭をポンポンした。髪の毛が全部白くなるのではないかと思うほど、和馬君の顔の色がなくなった。
「ちょっとまだ夕飯には時間があるから、見てほしいものがあるんだ。こっちに来てよ」
手招きしてからボクと和馬君を従えて店の裏へ回った。店の裏側にあるちょっとした斜面を上ると木造の小屋がある。
「どうせ二人はここを知っているでしょ」
お父さんは扉を押し開けた。照明を点けると浣人たちが、びょおぉおぉみゃぁああぁ、と悲鳴のような鳴き声を発しながら奥に逃げ惑っていた。
浣人たちの様子がおかしかった。全員全身に包帯を巻いている。
「どうして包帯しているの」
「これは下拵えだよ。この植木鉢の男根は子種を提供するだけではなく、肉を柔らかくエロティックにするための調味料も作ってくれるんだ。まァ調味料って言ってもそれは精液なんだけどね。はっはっはっ」
包帯に精液を染み込ませてそれを浣人に巻いているようだ。精液にそんな働きがあるのか知らないが、お父さんは本気だ。
和馬君が駆け回り出した。
「レイチェルっ、レイチェルっ」
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