カーニバルの佳境、青紫に燃えるお父さんの正義

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 浣人の顔はだらしなく弛み、口角から多量の涎を垂らして膨張したボコボコの肌を白濁に汚していた。 「んでだ。ここまでやったら植木鉢の中にある」  急に声が聞こえなくなった。お父さんの体も視界から消えた。何が起きたのか分からず、浣人の足を広げながらボンヤリしていると重たい痛みが後頭部に広がった。 「この非人親子が」  その場で倒れて見上げると船橋さんが七輪を両手で持っていた。七輪で殴られたに違いない。 「慎太郎君、君には失望した。どうしてこんな奴の言いなりになっているんだ。君はこいつの被害者ではなかったのか」 「お前、俺を連れて来たのは、こんなもん見せるつもりだったんじゃないだろうな」  船橋さんの声に続いて和馬君の言葉が朧になった脳の中をオーブのように飛んで消えた。  ──ボク知らないボク知らないボク知らないボク知らないボク知らないボク知らない。  二人の言葉を追い払うように否定する言葉を振り回す。どうしてボクがお父さんと同じ扱いをされないといけないのか。ボクはお父さんみたいになりたくない。ボクはこんな小屋にいたいなんて一ミクロも思っていない。  ふらつく頭を両手で固定しながら立ち上がる。何もかもが捻じり狂って見える。和馬君や船橋さんの顔が社会の教科書で見た勾玉そっくりだ。 「やっぱお前、そういう人間だったんだな。俺、一緒にここで肉食べた時からずっと思っていたんだよ。こいつはマジで頭おかしいって」  それはボクの責任なのか。お父さんのせいではないか。ただ単純に肉が美味かったから美味いと言っただけなのに。 「だから、お前のお父さんもだけど、お前も殺そうと思って来た」  意識をしっかりさせて、和馬君を凝視すると彼の右手に血まみれの果物ナイフが握られていた。足元には裸で丸くなって悶えている、毛が人工芝みたいに一面に生えているお父さんの背中が見えた。 「やあ、和馬君や、君、これで豚箱行き、決定だね。君が家畜に、なっちゃうね」  お父さんのかすれた声が途切れ途切れに聞こえる。微風に吹かれる牡丹の花びらみたいにフルフル震えていたが、むっくり背中を膨らませて上体を一反木綿みたいに緩々起こした。
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