3「どす黒い雲!」

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3「どす黒い雲!」

泰蔵が店内からどすどすと踏みしめるように、暴れ出てくると、空は、すっかり灰色よりもどす黒い雲が覆っていた。 まだ梅雨開け前。7月初めの、じめじめした蒸し暑い空気! 時よりちかちかと稲光もして、今にも、大粒の雨がふってきそうな様子に怒りまっくすの泰蔵はまだぶつぶつとお構いなしに、適当に止めてあった、タクシーに乱暴に乗り込もうとドアを開けた。ついでか、ちょうどすぐ横に市の職員が植えたと思われる香臭のかおる、純白のくちなしの花に気づいて・・・。 泰蔵「こんの、、人の空気も読まんといっつも甘臭っせえにおいばっか放ちやがって、くそ~!(# ゚Д゚)」 と、半八つ当たり気味で何本か勢い任せに、枝ごとぶっちぎった! ちょうどその時蝉が隠れていたのか、一匹の大きなクマゼミが花壇からびっくりしたように泰蔵の顔の前を横切っていった。 独特のひんやりした水しぶきを噴射しながら・・・! 泰蔵「ああっ、冷てえ!このばかゼミがっ!きたねえしょんべんかけやがって~!今度俺の前に転がってやがったらお前ら全部踏みつぶしてやっからな!覚えとけ!( # ゚Д゚)」 物騒な言葉を大声で吐き捨て泰蔵はそのまま、バーンと勢いでタクシーに乗り込むと、まだ飲みかけの座席の横にあったコーヒーボトルの中にくちなしを突っ込んだ! どうやらタクシー中の臭い消しがわりに、使っている様子だ。 そして、ハンドル席横の、デジタル時計が2時半近く過ぎているのを確認すると、 泰蔵「ったく、あの、たわけらのせいで昼めし食いそこなったわい!( # ゚Д゚)」 先ほどの店の従業員や客たちの顔を思い出しながら、エンジンを急発進させた。 そして、マイペースにも、しばらく乗客を探すように走らせていると、 泰蔵「まあ、ちっと派手にやらかしちまったが、二度と行くつもりねえからいっか!(-_-メ)」 苛立ちも時間と共に遠くにぶっ飛んで行くように、顔の表情の険しさも消えて行った。 同時に、くちなしをさしたボトルの横にはさまっていた食べかけのつぶれた菓子パンの袋に目が行く。 朝飯にコンビニで買ったやつで、激甘すぎて口に合わないと数口で口にするのをやめたアンパンだった。 泰蔵はそれを恨めしそうに、少しの間、運転と交互に眺めていたが、結局空腹には逆らえず運転中なのにもかかわらずかじりついた。 泰蔵「まっ、よ~く味わえば、食えねえ味でもねえわな!( `ー´)ノ」 相変わらず屁理屈ぐせがしみ込んでいる泰蔵! だが、次の瞬間、携帯に一本の会社からの電話に、泰蔵の遠ざかっていた怒りの炎が再び蘇ることになるのだ。((+_+)) c60a037a-cdcc-4d4e-80f9-a8a6367f9b56
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