プロローグ

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プロローグ

   ──相手に想いを伝えるという行為は、全てが無自覚な愛情表現だ。  目に染みるほどの金色の髪と、澄んだ碧眼を纏った青年が、窓から顔を出す。  シャープペンシルを右手に。  さらには、美しい赤色と紺色を描く空に向かって、左手を伸ばしている。  ──罵倒も、称賛も、心配も、告白も、愛がなければ、できない。本当に嫌いならば、それこそ無関心を貫くものなのだから。  そう心の中で言葉を紡ぐと、彼は窓から離れて、作業用の椅子に腰を掛けた。  同時に椅子の床に沈む音が、辺りに響いていく。  彼が視野に入れた机には、まだ何も文章の語られていない便箋だけが、ただぽつん、と置かれている。 「よし……!」  どこか意を決したように、優しくほほ笑む。  それから彼は、便箋に『愛ゆえに君へ伝える』と綴った。
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