第二章

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 二人がぽかんとした顔で見つめ合っていると突然、病室の扉が開いた。  まあ、どちらも考えていることは全く別のことであろうが。  潤に至っては今の状況がどうなっているのか全く持って分からないらしく、口を開いたままぴくりとも動かない。 「はぁっ、はぁっ……潤くんってば話を聞く前に走り出すから東堂お兄さん焦ったよ〜」  すると、自分の後ろから東堂の息を切らす音といつも通りの聞き慣れた声が耳に届く。  それと共に混乱している頭の中を一つ一つ整理しながら、碧と東堂の顔を交互に見て説明が欲しいという素振りを見せた。  彼には碧が無事で命に別状は一切ないという事しか理解できなかったのだ。 「あの距離をはや歩きでここまで来たのに東堂先輩、もう息切らしてるんですか? 運動不足の俺でも平気なのに……」 「……言っておくけど、東堂お兄さん、まだ若いからね?? 只の運動不足に決まってる。え、そうだよね?」  しかし、場を和ませる結弦からの東堂への弄りにより、説明を直ぐに聞くという事は叶わなかった。潤は走っていた事もあり息を切らしていたのには頷けるが、彼等は此処まで歩いてきたのである。東堂が運動不足というのは正しいだろう。 「え、どういうことなんだ? しかも、よく見たらお前、点滴打ってるだけで無傷じゃないか」  彼は碧の着ていた衣類を捲り、隅々まで怪我をしていないか確認する。多少擦り傷らしき物はあったが、日常生活で怪我をしたと言ってもおかしくない程に本当に軽いものだったので、無傷と言っても良い。  挙句にはズボンにまで手を掛けようとしたが、碧が寸前のところで止めることに成功した。 「……事故っていうか、歩道がガードレールの無いとこで道路に向かって体調不良と過労で思いっきり倒れちゃったんだよ。幸いなことに車の人がスピードを出して無くて倒れたのを悟ってブレーキを掛けてくれたからギリギリで車には轢かれなかった」  丁寧に東堂が身振り手振りを添えながら説明する。  簡単に要約すると、歩いている最中に体調不良で道路に向かって倒れてしまい、そこに偶々車が通りかかったというところだ。  これは事故というよりは只の体調管理の不足。  けれども意識を失っているということは、それ程精神的に思い詰めていたのかもしれない。 「はあ、()()()()()()()ってことですか。でも俺は事故って聞きましたけど?」  東堂に向かって彼は軽く睨んで呟く。今までやっていたお見合いを中断してまで、駆け付けてきた努力が無駄になったのだから彼が怒るのも仕方がないだろう。東堂は怯えというか恐怖から、冷や汗を頬に流して気持ちばかりの苦笑いをする。 「あはは……東堂お兄さんも碧くんと一緒に居たんだけど混乱して結弦くんに事故って伝えちゃったんだ。ほら混乱してたから……ご、ごめんよ〜、怒らないでくれ」  伸びてしまうのではないかと心配してしまうくらいに強く着物の袖を引っ張って必死に許しを乞う。一概に東堂が悪いとは言えないので許してあげてもいいのではないであろうか。  やはり、先輩という立ち位置なのにも関わらず東堂は可哀想な立ち位置だ。 「……今回は話を聞かなかった俺にも非があるので許しますけど、東堂先輩のせいで本当に心配したんですからね!」  頬を膨らめせて怒りながらも、彼はそれ以上東堂を責めなかった。  これは以前にも見た"押して駄目なら引いてみろ"戦法の潤かもしれない。何故かツンデレキャラを極め始めている。  でも何故、碧が体調不良で意識を失うまでに至ってしまったのか謎が残りつつある。  そこに疑問を抱いている潤の様子を察したのか、碧はゆっくりと口を開いて元カノと再会してから今までのことを話し始めた。
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