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持参した水筒が空になった。しかたない、自腹を切ることになるが、自販機で飲み物を買いに行こう――私は重い腰を持ちあげて図書館を出た。図書館裏の駐車場にしか自販機がないのだ。
「何にしよう……」
すると肩を叩かれた。
「はい?」
「あ、やっぱり! めぐみさんだ」
ふり返ると、私服姿の女の子が私に笑いかけてきた。
「えっと、だれですか?」
「あー、覚えてないですか。そうですよね、途中で転校しちゃったし」
その子は一人合点すると、改めて笑顔を見せて言った。
「同じ中学校に通っていた、鈴鹿です。鈴鹿英子、覚えていません……よね。私、二年生になるころ転校したので」
「あー、名前はなんとなく思いだしたかも?」
ウソじゃなかった。名前は記憶の片すみにあった。でも、その記憶の子は、もっと前髪が長かったし、地味そうだった。
けれど、今目の前にいる女の子は、全体的に短いショートヘアーのかわいらしい子だ。
正直、記憶の女の子と全然ちがう。
「めぐみさんに言われてから、ずっとショートヘアーなんですよ」
その子はそう言うと、照れくさそうに笑った。
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