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「あのあと、転校してから図書委員になったんです。そこで本好きの友だちができました。めぐみさんのおかげです」
「そっか」
「でも、なにより感謝しているのは、本を勧めてくれたこと、じゃないんです」
鈴鹿はまたはにかむ笑顔で言った。細い目尻にかすかに涙が浮かんでいる。
「私に、こう言ってくれました。〈アンタは笑顔がチャームポイントなんだから、髪をもっとばっさり切っちゃいなさい、春休みの宿題よ!〉って」
「あ……言ったかも」
彼女は「えへへ」と照れくさそうに笑うと「春休み、ちゃんと髪を切りました。ばっさりと。美容師さんもびっくりするぐらい、ばっさりと」と言った。
「私、それまで自分にとりえなんかない、って思ってたんです。でもめぐみさんの言葉で、変われました」
「いやいや、大げさすぎ。鈴鹿の力と魅力の成果だよ」
「またまた……めぐみさんの言葉は、何気ないひと言でも、今の私を支えてくれているんです。私にとっての、薬です」
「薬……」
「いつまでも大事にしていたいと思ってます。……迷惑ですか?」
鈴鹿はそう言って私の顔をのぞきこんだ。
私は気の抜けた笑顔で答えた。
「そんなわけないじゃん? むしろ光栄すぎる」
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