12.

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「まだ二回しか会ってないけど、崇彦にすごく惹かれてるし、君を独り占めしたいんだ。どうしたらいいかな?」 ストレートな告白に、胸が高鳴る。きっとアレックスが望んでるのはセフレではなく、もっと深い関係。それは、俺も望んでいたけれどなかなか口に出せなかった言葉。それをさらりと言ってくれるアレックスはきっと素直な性格なのだろう。 まだまだお互いを知らないし、その関係になるのは早すぎるのかもしれないけれど、俺らはもういい大人だ。 恋人という関係を、ゆっくり時間をかけて嗜もう。   俺はアレックスにキスをして答えた。 「このままでいいよ。俺もアレックスに惹かれているし、この先も一緒にいたい。変わったことはしなくていいから、まずはお互いを知っていこう?」 そう言うとアレックスは抱いていた腕を離し、その両手で俺の顔を包んでキスをする。そして唇を離すと大きな笑顔を見せてくれた。 「ああ、なんて素晴らしいんだ! クルーズをプレゼントしてくれた友人に感謝だな。こんな可愛い恋人と巡り合ったんだと、自慢していいかな? チケットをくれたのは君の船のオーナーだけど」 「……ちょっと待って、それやったら解雇されちゃう」 「彼はそんな懐の狭いやつじゃないから。いつも僕の心配をしてくれていて」 「アレックス、ベッドの上で他の男の話はだめだよ」  俺がそう言うと、彼はキョトンとした後にデレデレな顔をして俺の頭を撫でた。 「そうだな、ごめんごめん」 シャワーを浴び、シーツを変えたベッドに潜りこんで二人で眠ることにした。薄明るい部屋の中、アレックスの落ち着いた声は眠りを誘う。 「次は来週、出航だね」 「うん。そうだ、クルーズが終わって俺が帰ってきたら、葉巻を吸いながら一緒に過ごす、って約束しない?」 「最高だな。ああでもたまには、乗船していいかな? 待ち切れないかもしれないから」 あの日、『ウイングススイート』での情事を思い出して二人で笑う。 ここ最近、調子が出なかった『ウイングスオーシャン』での仕事も、きっとアレックスという拠り所が出来ることによって以前のように働くことができるはずだ。篠宮マネージャーが期待してくれているチーフへの道も目指していける。 俺はアレックスの笑顔を見ながら、自分の胸元に手をやり頭を下げた。 「最高のおもてなしをさせていただきますよ、お客様」 大事な乗客で大切な恋人に向けてそう告げると、おでこに優しくキスをしてくれた。 【了】
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