それぞれの夏〜小夜曲(セレナーデ)「ヒグラシさんの場合」

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それぞれの夏〜小夜曲(セレナーデ)「ヒグラシさんの場合」

「ねぇ、お母さん。林の道は涼しいね。」  遊んだ帰り道、たっくんは迎えに来てくれたお母さんと林の道を通ります。    風が吹き抜けて、少しだけ涼しく感じます。 「そうねぇ。ヒグラシの鳴き声も涼しく感じる一つよね。帰ったら、鳴き声聞きながらお庭の朝顔にお水、あげようね」 「お母さん、ヒグラシの声っていいね。ボク、ヒグラシの声を聞くと眠くなってくるー」 「たっくん、たくさん遊んだものね。疲れちゃったかな。ヒグラシの声はね、暑さ疲れを癒やしてくれる、優しい鳴き声なのよね」  お母さんは優しくたっくんの頭を撫でました。 「たっくんが大人になっても、ヒグラシの声を聞ける人でいて欲しいな」  たっくんとお母さんは仲良く、お家に帰って行きました。  お話を聞いていたヒグラシさんたちは嬉しくなりました。  ずっとずっと、鳴き続けよう。  夏の夕暮れ、朝の涼しさを届けよう。  そう思って、鳴き続けます。  今日も早朝と夕暮れに、聞こえます。  耳を澄ませてみてください。  カナカナカナカナカナ……  優しい声が聴こえてきます。  
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