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それぞれの夏〜諧謔曲(スケルツォ)「ミンミンゼミさんの場合」
ミィーンミンミン、ミイーンミンミン
ミーンミンミン、ミーンミンミン、ミィ~
夏に外に出たのだ。
暑さなんて、なんのその。
今鳴かなくてなんとする。
ミィーンミンミン、ミンミン
夏が大好きミンミンゼミさんがゴキゲンに鳴いている。
すると……。
「うるせぇぇぇ」
「暑苦しいなぁ」
「鳴き声聴くと余計疲れるよ」
人が通り掛かると、ミンミンゼミさんはピタッと鳴くのをやめてしまいます。
自慢の鳴き声だけど。
嫌われちゃうんだな。
ミンミンゼミさんは悲しくなりました。
他のセミたちだって気持ちよく鳴いているのにな。
どうして自分だけ嫌われてしまうのだろう。
「ねぇ、お父さん、ミーンミンミンてセミさん元気だねぇ」
「そうだね。こんなに暑くても元気に鳴けるってすごいよね。」
お父さんと小さな男の子が通りかかりました。
「ミンミンゼミさんの元気な声を毎日聴いていたら、お母さん、病院でも寂しくないね」
「もうすぐ、ミンミンゼミさんのように元気な赤ちゃんが生まれるよ。楽しみに待っていようね」
「楽しみだねー」
お父さんと男の子の話を聞いてミンミンゼミさんは泣きました。そして鳴き始めました。
ミィーンミンミン、ミーンミンミン。
自分でも元気をあげられる事ができるんだな。
そう思って、元気に声を上げました。
ミィーンミンミンミンミン、ミィーンミンミン。
だからどうか、うるさい、暑苦しいと思わずに聞いてあげてくださいね。
ひと月〜ふた月。
その間、だけなのですから。
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