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プロローグ
「別れよう」
「えっ? 何? なんで急にそんな事を言うの?」
「急じゃないよ.......ずっと前から考えてた」
「.......もしかして、他に好きな人でも...出来た?」
「そんなんじゃない。理紗子とは...さ、身体の相性がね.......やっぱりそういうのって長く付き合っていく上では大事な事だと思うから.......」
「............」
心臓の鼓動が一気に高まり軽く吐き気を覚えた。
何も言葉を発せられないまま、理紗子はうつむいた。
そして腿の上で握りしめた手に視線を落とす。
手の甲に浮かび上がる青白い血管を見つめながら、
『血は赤いのに、なぜ血管は青く見えるのだろう......』
ぼんやりとそんな事を考えていると、少し気持ちが落ち着いてきた。
そして理紗子は深く深呼吸をすると、やっと言葉を口にした。
「わかったわ.......」
理紗子はそう言うと椅子から立ち上がった。
そしてそのままカフェの出口へ向かって歩き始めた。
席を立つ瞬間、チラリと弘人へ視線を向けてみたが、
弘人はバツが悪そうな表情を浮かべたまま理紗子から顔を背けた。
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