プロローグ

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 カフェを出た理紗子は大通りを歩き始めた。 都会の喧騒に紛れながら、ひたすら真っ直ぐ歩き続けた。 十分程歩いただろうか? 気づくと隣駅の近くまで来ていた。 理紗子はふいに足を止めた後、右折してビルの間へと入って行った。 しばらく進むと植え込みがあり、その横にはベンチが置かれていた。 きっと昼の休憩時にサラリーマンが使うベンチなのだろう。 植え込みには白くて可憐なアベリアの花が咲いていた。 辺りに人の気配はなかった。 理紗子は崩れ落ちるようにベンチに座ると、そこで初めて声を出して泣いた。 泣き声は大通りを走る車のクラクションの音にかき消されていった。 理紗子は両手で顔を覆いながら、 『もう恋なんて面倒な事はしない......』 心の中でそう呟いた。
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