プロローグ

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プロローグ

大きなお腹を摩り、莉子はソファに横になりテレビを付けた。 妊娠初期は悪阻が大変だったし、後期になったらなったらで胃や腸などの臓器が大きくなった子宮に潰されて胃がもたれて苦しい。 それでもアタシは幸せだ。 ベビーベッドに、衣装ケースには水通ししたブランド物のベビー服。 子供が産まれるから引っ越した新居は港区のそこそこオシャレなマンション。 夫はひと回り以上年上だけど港区あるあるで周りもみんなそんな感じだ。 母親教室で友達になった奈々さんから安産にいいのだとオススメされたラズベリーリーフのハーブティーを飲む。テレビがニュースに切り替わった。 「3歳の女の子を母親が殺害した虐待事件でーー」 短くため息を吐く。どうして愛しい我が子を手に掛けることができるんだろう。アタシには全く理解できない世界だ。 さあ、午前中の家事も終わったし散歩がてら出掛けよう。部屋着のワンピースを脱いでハンガーにかける。 ふと鏡に映る自分を見る。 大丈夫、少し太ったけど全然可愛い。 ああ、どうか整形前の私ではなく、ぱっちり二重の夫似の子供が生まれますように。 アクセサリーを身に付けてアタシは外に出た。
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