7.

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一行が翠の領地に到着すると同時に民衆が彼らを讃えるかのように歓声を上げて出迎えくれた。シアンの後ろについているミヌはその光景が眩い光で照らされているかのように見えていた。彼らは領地の長老であるラオンの居住に着くと馬から降りて正門の前に整列した。 「シアンたちよ、よく無事に帰還したな。ソジンを前に連れてきなさい」 両腕を後ろにして縄で捕らえられているソジンを地面に跪かせると、彼はラオンを睨みつけた。 「ソジン。長きに渡る内戦を引き起こした罪は、いとも簡単には許されまいこと。牢でその罪を持念をかけながら時とともに償うのだ。良いな?」 「できるなら……この場で打首にしてもらいたい。なぜそれをしないのだ?!」 「シアンも言ったであろう。そなたが生きながら成仏できなかった者たちの魂を一つずつ数え、自らの悪情を消し去るまで唱えながら報いるのだ」 「ソジン。長老の命令は絶対的に従うのがこの地での掟。これから家臣たちがお前の住処を案内するから、大人しくついていくのだ」 ソジンはこれ以上は口にすることはなく、シアンの家臣に引き連れられて、奥地にある誰も近づかない場所へと向かった。ミヌは母と自身の弟にあたる子どもを連れて小屋に帰ってくるとスアとジュノが出迎えて、ジュノは久しぶりに再会した母の身体に抱きついていた。 「お母さん!会いたかったよ。僕たちずっと待っていたんだよ」 「ジュノ。また背が伸びたわね。ミヌと仲良くしていた?」 「うん。お兄ちゃん、シアンたちと一緒に戦ってきたんだよ。凄いでしょう?」 「ええ。この子の顔を見た時、ここまで勇ましくなったのかととても驚いたわ」 「スヒョンさん、改めましてスアと言います。お会いできて幸栄です。さあ、中へ上がってください」 スアは皆に薬草茶を出してもてなした。 「ねえ、お母さんは今までどこに住んでいたの?」 「ソジンの家臣が用意した住処があってそこにずっとこの子と育てていった」 「一人で大変だったでしょう?」 「それが、どういう訳か私と息子を気遣いながら家臣から色々と物資をいただいてね。そのおかげもあってここまで生き延びることができたの」 「物資を?一体誰からの命令でそうなったのかしらね?」 「お母さん。この子の名前は?」 「ヨヌよ。あなた達の弟。改めて宜しくね」 「僕抱っこしたい」 「いいわよ」 「……ヨヌ、僕がミヌだ。隣にいるのはジュノだよ。やっと会えたね」 ヨヌはミヌの頬に触れながら笑っていた。ようやく家族に会えたことを分かち合うと、シアンも戻ってきて彼もヨヌを抱くと産まれてくる自分の子の事を思いながら額に口づけをした。 「シアン。私達の住処を紹介してもらえるとことはあるかしら?」 「今はまだ来たばかりだからしばらくはここにいた方が安全だ。知り合いの職人に近いうち相談するからそれまではここにいてください」 「何もかもあなたには良くしてくれている。そのうちお返しができるようになったら私も何か手伝わせてちょうだい」 「まだ子どもも小さいんだし、そう急ぐ事はない。落ち着いたら妻の事を見て欲しい。それでいいかな?」 「もちろん。子育ての事なら何でも聞いてねスヒョン」 「ありがとうございます」 「ねえ僕たち夕飯の手伝いをするよ。今日は何?」 「魚よ。活きの良いのがあったから早速調理していくわね」 夕食を済ませてヨヌを寝かしつけてから、ミヌとジュノは母の傍で甘えながら会話をしていった。シアンが用意してくれた仕切りのカーテンと彼らの布団を敷くとジュノが飛びつくように中に入っては顔を出しておどけていた。 「ゆっくり休んでください」 「ありがとう、しばらくお世話になります」 「おやすみなさい、シアン」 「ああ、おやすみ」 「……ねえお母さん。シアン、かっこいいでしょう?戦の時も先導を切って敵と戦っていたんだよ。剣術の振りかざし方が凄いんだ」 「そう。あなたも彼のように使いこなせるようになったら私にも見せてね」 「あのね、僕もシアンから教えてもらっているんだよ。僕のも一緒に見てよ」 「ええ、二人とも期待しているわ。さあ、もう疲れているんだから寝なさい。ずっと喋っているとヨヌが起きてしまうわ」 「はい。おやすみなさい」 翌日の午前、ミヌはジュノと一緒にオリーブ畑へ出向きジアの居る集荷小屋で手伝いをしていた。その間も彼は戦の話をしてその場にいた大人たちの前で剣の技を見せていくと感心を寄せてくれていた。 するとジアはその話は聞きたくないと言い出して畑へ一人で走っていった。ミヌはその後を追ってどうしたのか訊くと、血を争うような話は耳に入れたくないと拒んできた。 「ごめん。だけどシアンたちがいてくれたおかげでみんなが無事にかえってくることができたんだ」 「ミヌも無茶な事をしたわね」 「え?」 「だってまだ剣も上手く使えないのに殺されなかったことが奇跡だわ」 「そう……だよね。たしかにそうだよ。こうして君の前にいることも奇跡なのかもしれないな」 「お願いだから、しばらくは戦いには行かないで」 「その時が来たらまた出ないといけなくなる。男なんだから出ていくのが使命だ」 「もうやめて!」 するとジアはミヌの手を握ってきては彼は動揺してなぜこうしているのかを訊いてみた。 「一人でも命が絶ってしまうのが怖くてたまらない。もう、どこにも行かないで欲しいの」 「ジア、どうしたの?」 「まだ気づかないの?そんなに鈍感だった?」 「何だよ、言ってよ」 「私と一緒に友達になって欲しい。一番の友達でいて欲しいの」 「ジア……」 「私には本当の友達がいない。できるだけたくさん話せる人が欲しいって思っていた。それがあなたなの。色んな話が聞きたいし知りたいことがたくさんある。だから、ミヌと一緒にいたいの」 「良いよ。僕もジアと仲良くしたい。君は畑の事にも詳しいし僕も教えて欲しいことがたくさんある。だからこれからも一番の親友でいてあげるよ」 「ありがとう。……好きだよ」 「え?何?」 「もういいよ。早く小屋に戻りましょう」 「ええ、あ……待って!」 ミヌはジアの後を追いかけて走り出すと二人は嬉しそうに笑顔で畑を駆け抜けていった。
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