8.

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それから三年が経ちミヌは十六歳になり、その間にジュノとともにユルの下で武術も身につけていき学舎へと通うようにもなった。 自宅に帰り母が二人を出迎えるとシアンからミヌに連れていきたい所があるから後日予定を開けて欲しいと言ってきたようだった。 その二日後、シアンと一緒に馬で領地から離れた奥地へと向かい、その手前で馬から降りて手綱たづなを柵のところに掛けるとシアンの後についていくように歩いていった。 繁茂する草むらの中を入っていきある牢のような石垣の壁を伝って奥に進んでいくと見張り番をしている彼の家臣が立ち構えていた。シアンは先に進むように促してある鉄格子でできた檻の中を覗くと、そこにはソジンの姿があった。 「ソジン。面会だ」 「……もしかして、ミヌか?」 「はい。僕の事覚えてくれていたの?」 「ああ。もう三年か。前より随分背が高くなったな」 ソジンは以前よりも控えめな佇まいで口籠(くちごも)るように語っていた。 「シアン。どうしてここに?」 「彼がお前に会いたいと言ってきた。特別にここに連れてきた」 「ラオンの事との約束は守っている?」 「一応な。念仏を唱えるのはともかく俺が犯してきたことを思い出しては色々と打ちひしがれていったさ」 「だいぶ反省もしてきたようだな。だがまだお前には試練が待ち構えている」 「子どもの前で聞くのもなんだが、スアは元気か?」 「ああ。ようやく自分達にも子どもが生まれて、じきに三歳になる」 「お前たちが一緒になると言って聞かされた時には、俺ももどかしい気持ちで張り裂けそうになった」 「スアに、好意があったのは本当のようだな」 「ああ。まあもうとっくに昔の話だ。未練すらどこかに行ってしまった」 「そうか。それより先日来た時よりかは顔色がいい。薬草が効いているようだな」 「囚人にここまで手厚くしているのかだいたいは予想がつく」 「言っておくがあまり自分を責めこむようなことはよせ。また訊きたいこともあるからな」 「シアン殿。薬を与える時間ですのでそろそろお引き取り願いたい」 「ああ。ではあとをよろしく頼む。ソジン、今日こうして客人が来ただけでも感謝しろ」 ソジンは無言で頷いた。ミヌとシアンは檻から外へ出ると西日が強くこちらを差してきた。帰り道の山中でシアンはミヌにソジンの今後の事を告げてきた。 「もう少ししたら奴を蒼の領地へ帰還させる」 「どうして?終身刑として投獄したんじゃないの?」 「初めはそれを考えたのだが敢えて今の憔悴しきった身で領地に返すことで更に向こうで刑罰を与えられることになる」 「それはシアンが下したこと?」 「ああ。事前に蒼の長に申し出てみたらそのように対処すべきだと言われたんだ」 「僕だったらすぐに打ち首にしていたところだったな」 「父親の事もあったからな。だが奴には国のためにも死刑にも匹敵する罰をこれから着せるべく与え続けて生きていて欲しい」 「僕ならあいつを八つ裂きにしてやりたい……」 「ミヌ。もう奴の話はやめておけ。心が苦しくなるばかりでは先には進めないぞ。自分のためにももっと学ぶべきことはある。もう少ししたら俺から弓道を教えてやる」 「本当?ずっとやってみたかったんだ。ジュノも連れてきてもいい?」 「ああ。容赦しないからな」 「うん、いつものように叩き込んでよ」 「よし。日が暮れる前に領地に戻るぞ」 二人は馬を走らせていき、野山を駆け抜けていった。その晩、ミヌはジュノにシアンから弓道を教えてもらえることを伝えるととても喜んでいた。 二人は学舎から借りてきた武術に関する書物を読みながら、今度は自分たちが幼い子どもたちに武術を教えていける人材になりたいと語り合っていた。それを見ているスヒョンはヨヌをあやしながら微笑んでいた。
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